チェレステとホワイト

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整備された道を歩けば ローファーの踵が コツコツと鳴る。
それと同時に、荒北さんが押すロードバイクも チェーンが音を立てて鳴る。

荒北さんは男子寮、私は女子寮。
お互い横浜市出身だから、実家は遠い。だからお互い寮が今の帰る家。

夏といえど、辺りはもう暗い。
腕時計を見れば、短い針が９を指そうとしていた。




「…あのサ」

「？、はい」




学校から出たすぐのところ。
寮に向かう道の途中で 荒北さんが声を出した。




「…あー、いや、大したことじゃねェけどよ。

インハイ…Aチャンと行けるの、今年が最後だよなって、思ってサ」





その言葉を聞いて、少しきょとんとしたけれど、そのあとなぜか、じわじわと目元が熱くなった。

そうだ、荒北さんは３年生だ。私は２年生。
来年の夏、インターハイの舞台に 荒北さんはいるはずない。


“最後”という言葉は、重い。




「…荒北さん、私、寂しいです」

「…あーーー…、まぁ………そー、だよな」

「卒業しないでください」

「ハッ！留年しろってかァ？」

「はい」

「肯定すんなヨ…」

「荒北さんの、バカ」

「ハァ？！」

「なんで私より、一年早く産まれちゃったんですかぁ〜…」





だめだ、声が震える。
でも震えは止まらない。

まだまだ卒業はしないのに、なんでこんなに寂しいの。
いや、まだまだじゃない。気が付いたら、きっと、もう卒業式だ。

インハイが始まって…終わって、先輩たちは受験勉強、私達は部活を引っ張るので精一杯だ。


同じ学年じゃないから、教室も遠い。
会える頻度は確実に減る。


そう思うと、今度は 鼻がツン、とし、視界がぐにゃりとゆがむ。




「ハ？！なんで泣いてんだよ！」

「う…」

「ったくよォ…、しゃーねーだろ、早く産まれちまったもんはよォ…」




バッグをごそごそと漁った荒北さんは、ティッシュを取り出す。
そして３枚ほど適当に取り出すと、思いのほか優しい手つきで私の涙を拭ってくれた。

荒北さんにティッシュを持ち歩くという概念があったのか、という失礼極まりない考えが浮かぶ。






「俺は早く産まれてきてよかったと思うぜェ」

「え…？どうして、ですか？」

「こーやって、先輩だからって言うのを口実にAチャンを可愛がれンのは
先輩の特権だからナ」

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