こっちを向いてよお嬢さん

４９つめ ページ50

眉を八の字にし、俺を見上げてくる。


…不思議だ。




嫉妬にまみれたAの顔。

でも、そんな表情が愛しくてたまらねェ。







「…A、」

「は、はい」

「…好きだわ」

「えっ、は、はい」

「心配すんじゃねーや、俺は離す気も離れる気もねェ」

「…ん、」






安心したのか、ぽたりと涙を落とすA。

涙の溢れる目に唇を寄せ、キスを落とす。



ぎゅ、と俺の隊服にしがみつくのがまた可愛い。




あんな紙切れ一つでこんなに不安になっちまうんだな。

俺が傍を離れないように、ずっと腕にくっついてないと心配だったんだな。




あー、可愛い。


可愛すぎて、もう。






「…くく、」

「…総悟くん、？」

「…いや、Aが可愛すぎて笑えてきた」





ひたすら笑ってると、Aは頬を膨らませて怒った。


怒ってるところも、意地を張るところも、泣くところも全部が愛おしい。





指でAの涙を拭い 頭を撫でてやる。





「ごめんな、ラブレター受け取ったのも意地悪でィ」

「…違います…！本当は、相手の方が総悟くんに折角書いたお手紙なんですから受け取るべきなんです！でも…私がわがままを言ったせいで…」

「人が良すぎんだよ。俺だったら、Aがあんな手紙貰ってたら 渡してきた相手 人の恋人ひったくり罪でしょっぴくけどな」

「(…理不尽…)」




「…俺を本当に欲しいって思うなら、汚ェところも見せてみなァ。

嫉妬も、妬みも、全部な。


全部丸出しにして、俺を欲しがりゃいい」






そうだ。


Aは綺麗だ。
優しくて、純粋で、無垢で。


だから。




欲にまみれた本音をぶちまけて、俺を欲しがってほしい。





性格悪すぎ？

わかってらァ。





それでもAが本気で俺を欲しがる姿を見てみたい。






「………っ、」





ぼろ、と涙を流して 口をへの字にゆがめて 俺を見上げる。

真っ赤に染まったその顔。



嫉妬にまみれたその表情さえも綺麗っていうんだからAには困ったもんだ。






「…私しか、見ちゃダメです…っ」

「ん」

「…ラブレター、ほんとは貰ってるの、嫌でした！」

「ん」

「もう、貰うの、禁止です…！」

「わかった」

「…ひ、っく、………だ、大好き、です…っ！」

「…ん」

「…ふ、ぅ、……ひっ、く、総悟くんの、いじわる、…！」

「ん、ごめん」

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