百十四話 ページ40
『.....遥か大昔、私の御先祖さまは世界政府の実験体にされ、血統因子を弄られたそうです。
ある程度大人の身体になったら、体の細胞が死んでいくのを遅め、老衰を遅めるように。
そんなような実験内容でした。
結果は成功。その御先祖さまは約200年生きたそうです。
そして末裔である私の寿命は＿＿＿＿＿300年程。
その頃は、体の遺伝子そのものを弄り、体の何かを強化、衰退を遅める...様々な実験が行われていたそうです。
具体的な実験内容は知りませんが、実験が施された者たちの名前の最後に「エル」を付けました。
＿＿＿＿半永久的に家系として従属させるために。
私の父方か母方のどちらかは、隠し名“D”を持っていた。
神に永久に仕える天使と神の天敵の間に生まれたのが、私です 』
“天駆ける竜の蹄”
これは、天竜人の奴 隷に焼き付けられる紋章。これを付けられたものは人間以下と見なされる。
これは、誰もが
だが、この目の前の白く儚い彼女はどうか。
彼女の場合、ソレは身体でない。
塗り替えることの出来ない“名前”だった。
一見、一般市民でこの名を名乗っても何の疑問も持たない。
だが、全てを知る世界政府は？
この名を聞いた瞬間、死に物狂いで彼女の息の根を止めに行くだろう。
少し前まで、彼女は世界政府に追われた身だった。
何も知らない人たちに自分の穢れを話すつもりなど到底なかった。
けど、そんな偽る自分が、この世の世界の誰よりも一番、嫌いで仕方がなかった。
信じている人に、隠し事をしている自分が醜く感じていた。
『私の寿命は、尽きている訳ではありませんので、すぐ死ぬことはないでしょう。すみません、ベリィが怖いように言ってしまって』
｢あァ...なら、いいんだ｣
彼からは心からの安堵したような顔が見えた。
医者として...いや、
この先海を旅するクルーとして、また、愛する恋人として
彼にとっても愛する人が消えて行くことは死んでも嫌なことだろう。
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作者名：つんてん | 作成日時：2022年11月3日 19時
