両手の花には棘がある / 鞍馬祢音,ツムリ ページ24
・
両手に花という言葉をご存知だろうか。おもに2つの美しいものを同時に手に入れるというたとえとして使われている言葉である。父がキャバクラへ行っては両手に花だといって写真を送ってきたのは随分と前のことだ。お金で買った花束のくせになにをそんなに自慢しているのか、その理由は大人になった今でも納得はできないだろう。
だけど、私にもひとつ納得した上で言えることがある。
「Aとランチにいくのは私だもん!」
「Aさんと先に行こうとしてたのは私です!」
良いものをがたくさんあったとしても物事は決していい方向に進むとは限らない。
両耳を満たす2人の声におもわずため息をついた。
私の両腕はそれぞれべつの方向に引っ張られる。
時刻は大体12:00すぎ。学生、社会人だとお昼休みに入るぐらいの時間帯。この時間になるとどこのお店も混んでしまうのでコンビニでおにぎりでも買おうかと思案していた矢先のこの状況。
「Aは私と行きたいよね?」
「その質問の仕方は良くないと思います!」
「……3人で行くのはダメなんですか?」
「「だめ!」」
「……はーい」
口に出した妥協案は何を言っているんだとばかりに一蹴されてしまう。
しかしそうは言ってもこうやっていつまでも口論をしていたら食べるものもなくなるばかり。どうしてエネルギー補給のための昼ごはん前にエネルギーを使わないといけないのか、よくわからない。
「そもそもなんで私となんですか?英寿くんとか景和くんなら一緒に行ってくれそうですけど」
え、俺?と聞こえたが今は彼に構っている暇は無い。目の前の彼女たちは私をじっとみていた。
「……わかってない」
「ん?」
「全然わかってない!」
「そうです、私たちはAさんと一緒にお出かけしたいのに」
「えぇ……」
今度は2人して私へと抗議の言葉を浴びせてくる。さっきまで口喧嘩していたとは思えないほどの息のあいようにおもわず身を引いてしまった。
「Aは恋愛経験が少ないんだな」
とりあえずカウンターで笑う狐は後でぶん殴らせてもらう。
止まない抗議の声、締め付けが強くなっていく腕。
私が持っているお花たちは美しさと引き換えに鋭利な棘をもっているらしい。
今日はお昼ご飯を食べる時間はなさそうだなぁ……はぁ……。
何度目か分からないため息を、つく。
99人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いとこんにゃく(プロフ) - ?さん» リクエストありがとうございます!了解しました! (2023年3月21日 21時) (レス) id: 7d068b8785 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - どうも、リクエスト失礼します!オーズのウヴァさんでツンデレ〜な感じで宜しければ書いて頂きたいです! (2023年3月20日 10時) (レス) id: 2395e0c03b (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 刻卯さん» はじめまして!了解しました!お時間頂くかもしれしれませんが気長にまって頂けると助かります! (2023年2月26日 18時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します。ギーツで甘めのキューンくんを書けたらで構いませんのでお願いします。 (2023年2月26日 17時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 壱さん» 感想ありがとうございます!取り合い系大好きなので書いていてすごく楽しかったです。笑バレンタインネタ了解しました!お時間頂くかもしれませんが気長に待っていただけると幸いです🙏🤍 (2023年2月22日 23時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いとこんにゃく | 作成日時:2022年6月1日 0時