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「城戸くんっ!何があったの!」
返事がない。そのまま物置部屋のほうへとずんずん進んでいく。引きずられるがまま私も城戸くんに続いて部屋に入る。
「ねぇ、止まってよ……きゃあ!」
突然足裏にはしる痛み、世界がまわる。だけどどうにか城戸くんの腕だけは離さないように必死で、2人ともバランスを崩して城戸くんに押し倒される体制になってしまった。
今度は私が手首を掴まれている。痛い、鋭いガラスのようなものを踏んでしまったんだろう。足裏からどろりと嫌な感触がした。
彼の長い髪が私の顔へかかる。
「きょうの城戸くん、なにか変だよ」
「変じゃないよ」
嘘だ、絶対そんなことない。
彼の顔が近づいてくる。普段の城戸くんよりも感情がなくて、何か思い詰めているような、そんな表情。
涙がおちる私の瞼に蓋をするようへ口付ける。
そのまま流れるように唇へキスをされた。
啄むようなキスの雨、小鳥が餌を求めている、そんな貪欲な口付け。
狭い部屋の中でリップ音だけが鳴り響く。息ができなくて、苦しくて。なぜか涙が止まらなかった。
「っ城戸……真司くん!」
「っ……」
瞳が揺らぐ。瞳の中にうつるのは私が涙をこらえている姿。息を、呑む音がきこえた。
「ちがっ、傷つけたかった訳じゃなくて、いなくならないでほしくて、おれは……おれは」
おいていかないで____か細い声を出す彼。まるで暗闇の中で1人置いてきぼりにされたような、そんな縋るような声。
どんなにひどいことをされたとしてもそんな声で頼られたら突き放せるわけなくて、開放された手で彼の背中を撫でる。自分の手首にある手の跡が今は気にならなかった。
私が手を背中に伸ばせばおそるおそると伸ばし返してくれる。
「ほんとにごめん」
「いいよ、別に。気にしないで」
「うん。……あ、足怪我してる!」
きゅ、救急箱とってくる!といってするりと私の腕から抜け出し、駆け足でリビングの方へと向かう城戸くん。
よかった、いつもの城戸くんだ。城戸くんの手の甲のほうが血だらけなのに私の心配をするところがなんとも彼らしくて笑ってしまう。
先程まで騒々しかった部屋にひとりぽつりと取り残される。
……そういえば、私城戸くんに住所教えたっけ。
冷や汗が背中を伝う。
扉から入ってくる隙間風が酷く寒く感じられた。
***
リクエストありがとうございました!
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いとこんにゃく(プロフ) - ?さん» リクエストありがとうございます!了解しました! (2023年3月21日 21時) (レス) id: 7d068b8785 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - どうも、リクエスト失礼します!オーズのウヴァさんでツンデレ〜な感じで宜しければ書いて頂きたいです! (2023年3月20日 10時) (レス) id: 2395e0c03b (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 刻卯さん» はじめまして!了解しました!お時間頂くかもしれしれませんが気長にまって頂けると助かります! (2023年2月26日 18時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します。ギーツで甘めのキューンくんを書けたらで構いませんのでお願いします。 (2023年2月26日 17時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 壱さん» 感想ありがとうございます!取り合い系大好きなので書いていてすごく楽しかったです。笑バレンタインネタ了解しました!お時間頂くかもしれませんが気長に待っていただけると幸いです🙏🤍 (2023年2月22日 23時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いとこんにゃく | 作成日時:2022年6月1日 0時