明日の天気は晴れですか？【特撮短編集】

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「なにしてるの？」

静かな部屋に響いたその声にハッとする。
危ない、いま私はなにをするところだった……？ 英寿くんに包まれて、そのまま流されるように彼の思いの通りに動いてしまっていた。

英寿くんから離れようと手をソファに置こうとするが両手を掴まれているせいで無闇に動けない。さっきの出来事のせいで力が入らないため振り払うのも非合理だろう。

「なにしてるのって聞いてるんだけど」

語気がいつもより強い声色で再び問いかける景和くん。気づけば同じソファに座っていた。これで私は向かい合っている英寿くんと景和くんに挟まれてしまったかたちとなる。

「さすがにそれは見過ごせないかな」

「Aは嫌？」

「えっ、嫌っていうか、恥ずかしいっていうか……なんでって気持ちが強いかな」

「ならいいだろ」

「ちょっとその聞き方はズルいでしょ」

こちら側へ質問がくると思ってなく、しどろもどろとした返事になってしまった。英寿くんは余裕の笑みを浮かべてまた髪の毛を触ろうとして__


「きゃっ……」

「英寿くんだけ独り占めはよくないと思うんだけど」


ぐいっと腕を引っ張られ、今度は景和くんに抱きとめられる。景和くんは片方の手で私の手を掴んで、もう一つの手で私の頭を優しく包み込む。そのせいで英寿くんの表情はもちろん、景和くんの表情すらみえなくなってしまった。

景和くんの心臓の動きが直接身体に伝わってきて、それに呼応するかのように私の心臓も動きをつよめた。英寿くんが香水の良い匂いだとしたら景和くんは実家のような安心できる匂い、だけどなんだかクラクラしてきて、おもわず景和くんの肩に頭を乗せた。

ぴくりと彼の肩が震える。


「へぇ、英寿くんもそんな顔するんだね｣

「……タイクーンも平和主義者じゃなかったっけ」


両者の表情が何も見えないがおおかた睨みあっているのだろうと予想がついた。離される様子のない手、止まることのない探り合い。布の動きから英寿くんがこちらへと近づいてくるのがわかる。

これは長丁場になりそうで__




あぁ、もう、狐と狸の喧嘩はよそでして！

trick ''and'' treat / 迅→←化かしあいは平行線 / 浮世英寿,桜井景和

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