【アイナナ】ピアニストの彼女【百】 Lesson2♪

ピアノ86 ページ45

――東京音楽芸術祭 当日。


事件が起きたのは朝だった。

百のスマフォが鳴る。電話の先は、TRIGGERマネージャーの姉鷺からのものだ。


百「おはよ！朝からどうしたの？」

姉鷺「もしもし？百ね！どうしよう…！」



朝一の電話は決して吉報ではなく、とんでもない連絡であり、

スマフォを握る手をぎゅっと強める百。


「ももくん？姉鷺さん、なんだって？」

百「ごめん、A。先にアリーナ行ってて」


ハッとすれば、他の仲間に連絡をとるためにラビチャに指をすべらす百。

ただならぬ相方の様子に待ったをかけつ松雪。


「待って、ももくん。なにかあったんでしょ？お願いだから、話して。」


ぎゅっと彼の服の裾を握れば見つめる松雪。

それはいつもとは異なり力強く、まっすぐと見据えるのだ。


今日の芸術祭にきてしまう限り、彼女には遅かれ早かれ知られてしまうこと。

百はひとつ息をはき、話すことを決意する。


百「A。落ち着いて聞いて」



"TRIGGERが誘拐されたかもしれない"




「え…」

百「今から俺、みんなを集めて探しに行くから」

「待ってなんでそんなことに」


言葉を紡げばはっとする。

最近、いきなり人気をみせてきてるZOOLというユニット。

ここ最近のTRIGGERの自分への冷たい対応。



「月雲了――。」


松雪の中でここ１年のことがひとつに繋がる。

繋がれば、彼の裾を握る手に力が籠る。


「私のせいだ。私が、彼に」

百「ちがう、それは違うよ。A。」

「こんな卑怯な手…！」


へたと、その場に座り込む松雪。

毎日能天気に笑っていた私は馬鹿か。


TRIGGERは私にどんな気持ちで接してた？


龍は、なんであんなにふうに笑いかけてくれた？



楽は、なんでだまって私の頭に手をおいてくれた？



天は、どんな気持ちで私に冷たい態度をとり続けた？



つらいことを抱えながらも、負けずに毎日戦ってきたのは彼らだ

私はいつだって守られていて、

本当に自分の無力さに嫌気がさす。


裾から手を離せば、両手で自分の頬を叩く。

泣いてる場合なんかじゃない…！



「わかった」

百「え？」

「私が行っても足手まといだから、３人は百くんに任せる。３人をお願い」

百「わかった。Aはどうするつもり？」

「私は、ゼロアリーナにいって、三人が間に合っても大丈夫なように頑張る。」


まずは自分のできることとからするよ。

そう伝えれば百が仕方ないな、と笑う。それが事件当日の朝のこと。

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