【募集企画】あるマスターの日常 -第二幕-【派生作品】

□79話　視点:ギルガメッシュ(キャスター） ページ30

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　エルキドゥに手を差し出され、かたかたと震える樹。差し出された手に戸惑いつつも、握らないのも失礼かと結論を出したのか、やっとの思いで握ったのがつい先程のこと。


「ほん…もの…？」

「ふふ、もちろん本物だとも。触って確かめてくれてもいいけど」


屈んで視線を合わせれば敢えて距離を縮めるエルキドゥ。

完全に楽しんでおるな、あれは。


と、なぜかいらつく感情を抑えるも「ちょっと失礼します」とやっとの思いでエルキドゥに伝えたと思ったら我(オレ)の方へ歩いてくるではないか。


「なんだ、樹、もう良いの…うおっ」

「ちょっと来い…」


いつもより力の限り手を引かれれば厨房の裏へと連れていかれ、なぜかしゃがまされる。

おい、なんだこの図。アーチャーに奇妙な視線をむけられるではないか！


と、苦情を言おうと口を開こうとすれば先程とは考えられない速度で話しだす樹に面食らう。


「待って待って、まじで無理。しんどい、尊すぎてまじでしんどいんだけど。まじであのエルキドゥと友達なわけ？元から美人なのは書物で分かってたけどさ、近くでみたらまじでやばかった。瞳なんてなんかきらきらしってし、肌もすげぇきめ細けぇの！やばいやばい、まじでやばい」


「おい、樹」


「実物みたらやばかった。髪もめっちゃ艶あるし、あんな綺麗な髪色見たことねぇよ…それに、あの声。反則だろ…ドストライクなんだけど…無理、もう俺、あれ以上話すっていうか同じ空間にいて同じ空気吸うとか無理。」


「落ち着かぬか！馬鹿者！！」


スコーンと厨房にあったスリッパで樹に一発いれてやれば、途端に真顔になる瞬間を見た。

なんだ、その反応は…この我(オレ)の予測を超える…だと？！


「あんな英霊にあえて、冷静になれとか。お前、人か？人なのか？」

「我(オレ)は、半分神だが」


「もう半分は人間だろうが！」


スコーンと必殺スリッパ返しがなされれば、先程よりも情け容赦のない音が厨房に響く。

これには、赤い弓兵も目を丸くしたが、少しすれば声を殺して笑っていることに気づく。


このっ、贋作者(フェイカー)めが。


だが、ここでただでやられぬのが我(オレ)よ。


「樹。ちょっと来い」

「はっ、おい引っ張るなって！まだ心の準備が！…無理、しんどい！」


手を引き、エルキドゥの前へと引きずりだせばにこにこと笑う友よ。


煮るなり焼くなり好きにせよ。



「わかったよ、ギル」

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