【短編集】お気楽主が今日も手強い【派生作品】 (ページ10)

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07：先輩&師匠ページ10

視点：大和守安定

　あー、いらいらする。すっごい、いらいらする。別に、"あの女(ヒト)"が嫌いだとかそういうわけじゃないけど、なんでだろう、無性にいらいらするんだ。

そんな安定の気持ちを知らずか、先程から隣で鼻歌交じりについには口笛にまで発展しだした主は、自販機のお気に入りドリンク片手に端末をいじっている。

「～♪」

主…もとい、深山静稀がご機嫌モードである理由は２つ。

１つは、ついに女難の運命(さだめ)から解放されたということ。そして、２つ目は心から慕う先輩と師匠が喜んでくれる顔を早くみたいということ。

先程手に入れた綺麗な和紙で包まれたお菓子を眺め、口元が緩めば、それに反し、眉間に皺が寄る安定。

だが、そんな彼の様子にも一切気づく様子もなく口笛は続投されるのだった。

「先輩、そろそろ帰ってくるかな。なあ、安定。師匠の気配する？」

「さあね」

こちらの気も知らずに、呑気に笑ってるこいつになにか言ってやりたいけど。

言ったら言ったで心が狭いって思われたりするかもしれない。それはそれで、嫌だ。

気付けよ、馬鹿。

そんな二人が待機する二階の広間だが、引渡員と研究員のオフィスを隔てるスペースに小さなソファが設置されておりそこに深山が訪れることは決して珍しいことではない。

というのも、彼の持ち場は三階なのだがあそこは息が詰まる上に、

嫌でも、嫌いな書類が目に入る上に、目が合えば仕事を任されるであそこは彼にとって散々な空間なのだ。

そんなわけでここに居座ることが日常になりつつあるわけだが…。

目的は別にもある。

「お！先輩に乱ちゃん、お疲れ！」

やや女性めいた美しい顔立ちに年齢のわりに少し低身長の男性。

自身の刀剣男士、乱藤四郎と共に、転移式ゲートから現れた彼は深山と同様、戦闘員としてここブラック本丸対策課に配属された辻澄哉(つじすみや)である。

少し驚いた様子を見せつつも、"静稀くん？"と首を傾げた後、"待っててくれたんですね"と柔らかく微笑む彼を深山は好ましく思っている。

そんな彼とは、戦闘員としての先輩である他に、大学での先輩であり勉強からおでかけまでプライベートでの交流も密で、仲の良さを表現するのならば、謂わば語りのみで夜を明かすことができる程か。

そんな彼に安定もどこか心を許しており、辻と視線を通わせれば小さく頭を下げるのだった。