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午前のデスクワークを終え、午後は修繕にでていた艦の確認に出向く。
現在の軍での立場では、任務なしにこうして外勤にでるようなことは稀なわけだが、部下の計らいなのだろう。
炎天下の元での確認作業は実に気分が悪くなるわけだが今日はこれくらいが調度良いのかもしれない。
小波をバックに、淡々と行っていくある種の最終点検は謂わば儀式めいたなにかといってもいい。
「ブーゲンビリア大佐、いかがでしょうか」
「今のところ大きな問題はなさそうだ。最後に船首をみせろ」
「はっ」
緊張した面持ちで敬礼をする隊員。
ここでの点検作業を任されているあたりおそらく入って間もない隊員なのだろう。
そういったことに気づけるだけ成長したのだろうが、気の利いた言葉を発すことは無論この男にはなく足元のおぼつかない彼の後を淡々とついて歩くのだった。
「こ、こちらです…っ」
「……いいだろう」
手元の書類にさらさらと必要事項を記入し、最後に自身のサインを書き入れたところか。
慌てた様子で駆け込んできた別の隊員に思わず溜息をこぼす。
おそらく、この目の前の隊員は新入りなのだろう。
「失礼致します!大佐、港近傍の公園で問題が起こったようなのですがいかがいたしましょう…っ」
「それくらいのことも判断がつかないのか…いやいい。具体的な場所は」
「も、申し訳ありません…その場所なのですが…」
おそるおそる地図を開き状況説明を受けるもいまいち煮え切らない。
そうさせた要因が自分にあることは薄々自覚しているわけだが、つい舌打ちがでそうになる。
というのも、確かに彼の中に存る彼女が自嘲めいた笑みを浮かべたためだ。
「陸軍との境界ということか…面倒だな」
「いかがされますか、大佐。私が様子を」
「二度手間になっても面倒だ。私が行く、案内しろ」
問題が起こった地点は普段から人通りが多いものの、両軍の境界地点ということでなにかと問題は起こりがちな地点。
そんな実にくだらない理由で手薄になる警備に漬け込むあたり、また犯罪を行う者も一癖二癖強い者が多く、面倒事であることには間違いない。
「また盗難関連の事項でしょうか」
「さあな。まずは民間人の安全の確保を第一に考えろ」
念のため、と直属の部下に伝えれば一際人の集まる時点に到達する。
おそらく事の発端とみて間違いないだろう。
「大佐。報告しますっ、民間の方が取り押さえ収束したようです」
民間人が、だと。
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湊(プロフ) - ユキさん» 初めまして、コメントいただきありがとうございます。少しでも作品の素晴らしさをお伝えできるよう今後とも頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。 (2021年10月31日 11時) (レス) id: ab18fde111 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます! (2021年10月30日 13時) (レス) id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - 小桜さん» そんなそんな。こちらこそお待ちいただけるということ程、本当に心強いことはなくて。こちらこそ、本当にありがとうございます。 (2020年12月27日 20時) (レス) id: ab18fde111 (このIDを非表示/違反報告)
小桜 - 更新ありがとうございます!本当に素敵な作品です!これからも更新待っています!! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - れいさん» 初めまして。あたたかいコメントいただき私も胸がいっぱいです。お手に取っていただき、そして素敵なお言葉をかけてくださり心から感謝を。引き続きお楽しみいただけるよう精一杯頑張らせていただきます。コメントいただきありがとうございました! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 83bbd53189 (このIDを非表示/違反報告)
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