16.向き合って ページ28
「ンだよ、話って」
俺がいつもカフェで飲んでいたことを覚えていてくれたのか、空却はコーヒーをいれてくれた。
ブラックで、甘味のない濃い液体が、ほうほうと湯気をたてる。
俺たちは机を挟んで座った。
普段は見れない胡座と、少し丸まった背中が猫のようだ。
「ごめん。別に深い用はないんだ。ただ、話したいなと思っただけで」
話す内容は考えてもいないし、思い付きもしなかった。
でも、それでも、ただ、会いたかった。
「そうかよ。まァ、別に拙僧は構わねェけどな」
「じゃあ、来た次いでに、1つ聞いて良い?」
おう、何でも聞けやと、言うように、空却は目を大きく開いてにいっと笑った。
恐ろしいものを口にするように、唇がかさついて、少し震える。
「何で、俺を選んでくれたの。……生涯を、捧げようとしてくれたの」
時計の音がうるさいくらいに響く。
沈黙が少し苦しい。
あの日が、空却くんにとって無かったことになっていないことを、静かに願った。
「何で、だろうなァ。別に、男が好きってわけでもねェし、さちが特別ってわけでもねェンだよ。」
ゆっくりと紡がれる言葉が心地よく、しっとりと心に沈んでいく。
俺は、空却の優しい声が好きだった。
「……ただ、さちがあんな風に、悲しまなきゃ良いと思った。拙僧がそう言えば、笑うんならそれで良かったンだよ。まァ、別に、拙僧もさちの事、友達として好きだしさ」
空却くんは、照れ臭そうに、ピアスで飾られた耳を赤らめて、決まり悪そうに笑って、これで良いか?と問いた。
そんな風に言ってくれるのが嬉しかった。
そして、包み隠さず伝えている誠実さが、ただただ暖かい。
一口含んだコーヒーは、ただ苦く、ほろほろと口で溶けていった。
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守澪 、 - Mad Sick Bad*さん» 閲覧 、コメントありがとうございます 。空却くん良いですよね 。公式のかっこよさを小説で表現し 、惚れて頂けて嬉しいです 。もう少し続けていこうと思うので 、これからも宜しくお願いします 。 (2020年1月20日 19時) (レス) id: f62cf8cecd (このIDを非表示/違反報告)
Mad Sick Bad* - 空却くん可愛いし綺麗だし、格好いいなァ。惚れ直す。 (2020年1月19日 18時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:守澪 、 | 作成日時:2019年12月18日 20時