11-3.掟 ページ22
ぐ、と強い力で体を捕まれ引き寄せられる。
金色に輝く瞳が、濡れた睫毛が、赤く染まった目尻が、いつよりも近くに見えた。
迷いのない動作で俺の後頭部に手が回され、唇が重なった。
現場で、打ち合わせで、休憩室で、数限りなく鼻先をよぎった香水が、今までにない濃さで鼻孔へと流れ込む。
生温い舌が唇をわって押し入ってくる。
かさ、と乾いた唇がどちらのものか分からない唾液で湿る。
嫌でも、嬉しくもなかった。
けれど、自分が世界から弾き出されても探しに来てくれる人が居るのだと知って、暖かい安心が繋がった唇から染みていく。
指１本触れずに犯し続けてきた体が目の前にある。
体温、匂い、粘膜の味。
そのどれもが、俺が作った幻よりもずっと豊富だった。
唇は甘く、舌は人を狂わせるようだ。
絡んだ舌がねっとりと口内を犯す。
あの狂ったような渇望が、腹の奥で疼き、ない筈の子宮が、きゅ、と疼いた。
時間を置いて、体が離れた。
濡れた唇を手の甲で拭い、名前を呼んだ。
「空却くん」
おう、と頷き、にい、と口角を上げ笑う。
まるで、俺のなにもかもが大好きだ、と言ってくれているようで、堪らなく愛しい。
雨が降っていた。
心配したとか、大丈夫なのかとか、ありきたりな事を聞かない空却が俺には酷く心地好く安堵を感じさせる存在だった。
「何か有ったンか」
ぽつ、と空却のスカジャンに水玉の模様が出来た。
隣に座っていたら汚れてしまうだろうに。
「俺と居たら、空却くんも死にますか」
要領を得ない頭の悪い質問を俺は口にした。
言葉は凪いだ水面に、こと、と溢れ波紋として広がっていった。
頭が掴まれて、指輪と皮膚が重なり硬質な音が立った、遅れて撫でられたのかと気付く。
「死なねェよ」
「でも」
「拙僧は確かに何時か死ぬ。でもさちのせいでは絶対死なねえ。誓う」
瞳に浮かんだ雫が、頬を伝い地面に雨粒と溶けて模様を作る。
絶対、という言葉に、そうなんだろうな、と思わせる響きと強さを持っていた。
空却はいつも、俺の事を掻き乱す。
「なァさち。拙僧の伴侶にならねェか？絶対独りにしねェし、寂しい思いも辛い思いもさせねェから」
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守澪 、 - Mad Sick Bad＊さん» 閲覧 、コメントありがとうございます 。空却くん良いですよね 。公式のかっこよさを小説で表現し 、惚れて頂けて嬉しいです 。もう少し続けていこうと思うので 、これからも宜しくお願いします 。 (2020年1月20日 19時) (
レス) id: f62cf8cecd (このIDを非表示/違反報告)
Mad Sick Bad＊ - 空却くん可愛いし綺麗だし、格好いいなァ。惚れ直す。 (2020年1月19日 18時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：守澪 、 | 作成日時：2019年12月18日 20時
