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6.昔話 ページ11

「彼女はね、高校の時に出会った部活の後輩だったんだ。何となく絵が好きだから、って理由で入って幽霊同然に活動していたんだけど。強制参加のコンクールで描かされた絵を、良いですね、って褒めてくれたんだ。俺には友達なんて居なかったから、それがすごく嬉しくて、彼女と次第に仲良くなっていったんだ」

懐かしい汗臭さがむわっと思い出と共に広がった。
空却は表情を和らげ懐かしむように目を細めて俺の話を聞いていた。

「出会って半年くらい経ってからかな。呼び出されてね、付き合って下さい、って言って貰った。断る理由もなくて、喜んで、なんて手を取った。
取らなきゃ良かった。忘れていたんだよ、自分と親しい人へと繋がる死の連鎖。夢を見てたんだ。
その、次の日にね、彼女は、亡くなった。現代の医療じゃ、理由は解明出来ないらしくてね。彼女に朝は来なかった」

甘酸っぱくてほろ苦い、これが青春というものなのだろうか。
もし、やり直せるならば彼女を傷付けても手を取らない。
彼女に生きていて欲しかった。
それが3年前の話だよ。

一通り話終えると、俺の目元がうっすらと熱を帯び睫毛が濡れていることに気付いた。
空却は溜め息にも似た息を深く吐き出してから、手負いの獣のような酷く静かな目で俺を見つめた。

「恨んでるかな」
「いーや恨んでねェよ。でももっと一緒に居たいってのは言ってる。」

どうすんだ?空却の視線に込められた意図を汲みとれば、どうしようかな、と呟き冷めたコーヒーを飲む。

「あんまし放っとくと、その内鬼になってさちを自分と同じ側に引っ張って行こうとする。3年っつうのもかなりだし、小さいのも何れは力を増す。今すぐ祓った方が良い」
「なら、お願いしようかな」

くす、と肩を竦めて笑って見せたが空却は元の険しい表情に戻り、分かった、と一言呟いた。

なら、早い方が良い、これから拙僧の家に来い。
領収書を手でぐしゃぐしゃに丸めつつ早口で告げられた。
苦味の凝縮された最後の一滴を喉に流せば、うん、と頷いて席を立つ。

先を行く空却の背中はいつにも増して凛々しく生も死も運命も全てを背負ってしまいそうな儚さがあった。
ぱち、かしゃん。

7.発展→←5.気付き



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設定タグ:ヒプノシスマイク , 市販書き(二次創作) , 波羅夷空却   
作品ジャンル:恋愛
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守澪 、 - Mad Sick Bad*さん» 閲覧 、コメントありがとうございます 。空却くん良いですよね 。公式のかっこよさを小説で表現し 、惚れて頂けて嬉しいです 。もう少し続けていこうと思うので 、これからも宜しくお願いします 。 (2020年1月20日 19時) (レス) id: f62cf8cecd (このIDを非表示/違反報告)
Mad Sick Bad* - 空却くん可愛いし綺麗だし、格好いいなァ。惚れ直す。 (2020年1月19日 18時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:守澪 、 | 作成日時:2019年12月18日 20時

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