プロローグ ページ1
死に憑かれている。
自分をそう思う様になったのは何時だったか。
初めは母だった。
暑さを引き摺った秋の始めに、交通事故で失った。
病院に駆け付けた時、辛うじて機械によって命を繋ぎ止めている状態だった。
乾燥した外皮の内側では、どうやら柔らかく湿ったものが動いている。
ふ、と空気を乱す熱っぽい命の震えを確かに感じることが出来た。
ただただ美しく、これが人間の一番生きている瞬間なのだと思った。
間もなく、母は息を引き取った。
次は幼馴染みだった。
新学期楽しみだね、宿題終わった? 明日一緒に行こうね、と話した翌日の飛び降りだった。
葬儀で見た棺に収まる小さな整えられた冷たい体。
二度とこの瞳に光が宿る事は無いことを知り、彼も生きていたんだなと改めて思った。
その次は父で、更に次は弟だった。
そして命の消失は波紋の様に広がり、遂に血縁者は叔父だけとなった。
不確かな噂だけが形を帯びて、その後友人と言える友人はできなかった。
人の死に接していく度に、自分は生きながら死に近付いていく感覚を覚えた。
寧ろこの世界に居ることが可笑しく、自分は本当はあちら側に居るべきなのではないかとまで錯覚する様になった。
人生の絶頂は死ぬ瞬間だ。
最大限に命を燃やし、必死に生きようと手を伸ばし、少しの光にすら縋ろうとする貪欲さが何より人間らしかった。
ぱち、かしゃん。
シャッターが切る。
心の中で何度も何度も。
こんなに美しさを生き物は生まれながらにして持つことを忘れたくないから。
ぱち、かしゃん。
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守澪 、 - Mad Sick Bad*さん» 閲覧 、コメントありがとうございます 。空却くん良いですよね 。公式のかっこよさを小説で表現し 、惚れて頂けて嬉しいです 。もう少し続けていこうと思うので 、これからも宜しくお願いします 。 (2020年1月20日 19時) (レス) id: f62cf8cecd (このIDを非表示/違反報告)
Mad Sick Bad* - 空却くん可愛いし綺麗だし、格好いいなァ。惚れ直す。 (2020年1月19日 18時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:守澪 、 | 作成日時:2019年12月18日 20時