6色のセコム【2】

#63 しんたろと ページ13

「うわ、最悪…」


目の前の空っぽな冷蔵庫に頭を抱えた。
最後に買い物行ったのいつだっけ？最近は帰るのが遅くて食べて帰るか食べずに寝るかの生活だった気がする。

仕方ない、ラーメンでも食べに行くかとバイクのキーを掴んだところでスマホが震えた。


「タロー？」
『今から家行っていー！？』
「いいけど、うちなんも無いよ。どっか出かける？」
『Aん家行きたい』
「えー？じゃあ自分でご飯とか買っといで、マジなんも無いから」
『わかったー！』

そう言って勢いよく切れた電話に、思わず苦笑する。
元気が良くて大変よろしい。
慎太郎が来る前にちょっと掃除するか。





それから1時間後、軽快なチャイムが鳴り響き玄関に足を向けた。

「おじゃましまーす！」
「いらっしゃー…ん？大荷物ね？」
「いっぱい買ってきた」

両手いっぱいのビニール袋を受け取ると、思ったより重い。中には大量に食材が入っていた。


「A全然料理しねーじゃん？作りに来た！」
「え、エスパー？」
「なにが？」


俺の言葉に首を傾げながら、勝手知ったる様子で冷蔵庫に食材を詰めていく慎太郎。あまりのスッキリさに顔を顰めた。

「マジで何もねーじゃん！何食ってたの？」
「ロケ弁とか、ツマミとか…」
「不摂生！！！！」
「ごめんなさい」

怒られて反省。
手伝いを申し出たけど邪魔でしかないから仕方なく見守り隊に徹することにした。



「A、エプロンどこ？」
「んなもんない」
「は？」
「俺の服着れば？汚れていいし」
「いーの？」
「いーよ」

適当なスウェットを頭から被せれば、少し嬉しそうに腕を通す。若干ブカブカなのが可愛い。

「俺も別に上手では無いけど、文句言わないでね」
「言うわけねー」



下手下手言うやつはそんな綺麗に魚を捌かないんですよ。

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