1人 423円 (ページ6)

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･水曜日･

今日も、オープンから番台に座っている。
座り続け、もう6時間が経過
疎らながらも、お客さんは来てくれて
鍵番しながらパソコンを打つ

「大人ひとり」

「はーい…って、いらっしゃい」

集中してた俺にそう声を掛け
お金を渡してきたのは、
金髪の髪を揺らした男で

「…なんか、髪伸びた？」

「おん、伸ばしてるんよ。」

伸びた髪は、後ろでハーフ？で縛っている。
男でもこういう髪型似合うんは凄い

凄いけど…

「あんさ…」

「んー？」

話しかけるも、相手はピロンとなるスマホにしか視線が行っていない。

「毎回言ってるよな？」

「んあ？」

「出来たら小銭がいいって
せめて5000円くらいにしてくれや…」

手に渡されたのは、10000円札。
お釣り作るのが大変やし、機械レジのないウチの番台に大きい数字のお札を入れておくのは少々不安なのだ。

「んー、そんなん言ってたっけ」

「言ってるわ。毎回毎回1万円で渡されて、嫌がらせかと思うわ！」

すまんーって、間延びした謝罪と出てくるのは500円。

「最初からそっちだしてくれん？流星」

「おん、次から気をつけるわあ」

ありがと、と男湯の暖簾をくぐる背中を見送るが

「つっっよいな！」

残るのは女性物の甘い香水の香り。
これは流星の香りなんかではなく

「今日は随分と…」

流星のお店や、ご飯食べてるところとかに現れる女性だろう。
実は毎回香りが違うのだ…

イケメンは大変や…

ほんで、そのイケメンくんが
水曜日の真夜中の常連さん。
まあ、見てくれてる人はわかるやろうけど
神ちゃんが好きなブランドのデザイナーさんや。

･

「スッキリした」

「そら、良かったなあ」

もう誰もいない紅寿に「あっ！！」と大きい声が響く

「え！なに！」

「蓋取り忘れてた…」

手に持つ、110円で買ったコーヒー牛乳の瓶をこちらに見せて
えへへ、と笑った

「くっ……しっかりせえや」

でたよ、皆さん見ましたか。

…天然出てるで、流星くーん！！
天然の天然持ちな流星はようこう言うドジをする。

時々、ほんまにこいつはデザイン描いてて
しかも自分のブランドの店を持っているのか。って疑う瞬間がある…