陸 ページ3
それからはもうとにかく自分のことを覚えてもらおうと必死だった。
見かけたら必ず挨拶をしたし、常に彼の姿を探すようになった。
「また来たのかよ。テメェも物好きだな」
「そうですかね……？獪岳さんの使う技、かっこよくて好きなんですよ」
「そうかよ」
獪岳さんは褒められることが好きなのか、このようにさらっと、態とらしくないように褒めると少しだが表情が柔らかくなる。
これは私が最近見つけたことだった。
ほくほくと頬を緩ませながら手にしていた茶を啜っていると、隣に座っていた獪岳さんが腰をあげる。
「あ、もう行かれるのですか？」
「任務が入った。じゃあな」
「道中お気を付けて！！またお団子食べましょうね！」
私が甘味処に無理に誘ったにも関わらず自分の分の支払いを長椅子におくと、ぶっきらぼうに手を振りながら去って行ってしまった。
私の「また行こう」という言葉に返事はなかったが、なんだかんだまた来てくれるだろう。
そんな事を思いながら彼の背中を見送る。
何となく暇になってしまい、手に持っていた団子の串を皿におき、自分の階級を確認することにした。
「はあ……やっと
かれこれ鬼殺隊に入隊以降、2年以上時間が経っているにもかかわらず、私の階級は依然中の中。平均より少し上くらいの実力だ。
鬼の妹を連れた例の隊士でさえ、今は丙にまで昇格したらしい。
「一応後輩なのに負けるなんてなあ……育てさんに顔向けできないや」
一松の虚しさを茶で流し込み、また団子を食べ始める。
ほとんど階級の上がることの無い私とは裏腹に、獪岳さんの階級はどんどん上がっていっていた。
しまいにはどんどん会えなくなるほどに力量の差が開いて行ってしまっていたのだ。
今日会えたのも恐らく半月ぶり。
「次はいつ会えるかな」
その後の合同強化訓練でも彼の姿はなかった。
「おいそこの地味にのろいやつ！！！とっとと走りやがれ！」
「はひ、はいっすみませっおえっ」
もしや……と嫌な予感が頭を巡る中、柱の方々にしごかれるまま、あっという間に日々が過ぎていった。
やっとこさ風柱様の稽古場に着いた頃にはもうこのまま死ぬのではと思った。
蛇柱様の稽古のときでさえ、何度か柱に括り付けられて痛い思いをしたのに、今度は風柱様の稽古……血反吐ぶちまけて失神するまでが一区切りと聞いた時には泣きたくなったものだ。
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�桟鈬�(プロフ) - リリィなモモさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！そうですね、獪岳が幸せになる世界線が欲しいですね… (7月15日 14時) (
レス) @page10 id: 6e9456ced1 (このIDを非表示/違反報告)
リリィなモモ(プロフ) - うあぁぁ！めちゃくちゃ良かったです！ほんとに獪岳は救いがないので少しでも幸せになってほしいですね… (7月15日 2時) (レス) @page10 id: e604e437d5 (このIDを非表示/違反報告)
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