【文スト】中原さんに貰われました。【中原中也】

花弁が六枚side中原 ページ7

「俺はこの金でお前を貰う。」

俺がそう云うと、目の前の女はぽかんと阿呆面を下げた。
面白い顔してんな。と心の中で笑う。
どういことかと宣うもんだから、行動で判らせてやった。

買うっつったからにはそういうこともしねぇとな。
そう自分に言い訳して。

女が何を思い、考えたかは判らない。
が、何かを決意したような真っ直ぐな目で俺を見つめ、

「宜しく、お願いします。」

そう云った。

その目と表情に見惚れたが、勿論、表に出すことも、本人に云うこともない。

何故、自分がこんなことをするのか。
俺自身、よく判っては、いない。

だが、恐らく、この女のことを憎からず思っているらしい。

『恐らく』に、『らしい』という何とも曖昧なものだけどな。


「・・・じゃあ、此れからはAと呼ばせてもらう。良いな？」

「はい。」

「俺のことも、中原さんじゃなくて中也で良い。」

「中也・・・さん？」

で良いですか？と頸を傾げる仕草に不覚にも可愛いと思ってしまった。

────こりゃ、思ってるより・・・・


やばいかもしれない。
否、別に不味いことはない。マフィアだって人に恋愛感情を抱くことはあるし、それがいけないということでもない。

────ただ、俺の問題だな。これは。

素直に手前のことが好きかもしれない。等という告白のようで曖昧なものを伝えては、相手に失礼だろう。

未だ、はっきりしていない。

だからとりあえず貰う(・・)ことにした。
一緒に過ごしてみて、はっきりさせようと。

我ながら最低だなとは思う。

金で女を買う。いつの時代の話だよ。嗚呼、否、裏社会では今も行われているのだが。

だが、例え最低な行為だとしても、自分が始めたことだ。
逃げることは、しない。



「此れから宜しくな。A。」

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