【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ43)

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第肆拾話ページ43

「……！」

天馬に体を揺すられ我に返る。

「次は剣城の番だよ。自己紹介」

「ああ……」

西園に言われ転校生の方へ顔を向ける。

紫の瞳が俺を見ていた。

思えば、転校生と目を合わせたのはこれが初めてかもしれない。

「剣城京介だ」

そっけなく言うと、

「よろしく」

転校生は小さくそういった。

「さ、自己紹介も終わったし、お昼食べよ！」

屋上に空野の明るい声が響いた。

――不思議な転校生だ。

何を考えているかわからない。

そしてなぜ俺がこんなにも転校生のことを気にするのか、

それすらもわからなかった。

――やってしまった。

と思った。

何をやってしまったのかはわからない。

けれどやってしまったのだ。

「……」

私をじっと見ている金色の瞳。

しかしそれは周りと同じ『急にやって来た謎の転校生への興味の視線』ではなく、『お前は一体何者だ。何をしに来たんだの視線』である。

きっと私がなにかをやってしまったからバレてしまったのだ。なにかはわからないが。

「……」

何を言われるでもない。ただ見られている。

大勢の人間を相手にするのは初めてだから正直疲れる。しかし、見られるだけも嫌だな。

これなら聞かれた方がまだマシだ。

その金色の瞳の男は少し周りと違っていた。

藍色の髪、くるくるとした揉み上げ。

――あれが現代の"ファッション"というやつか？

……ハイカラハイカラ。

そして齢に合わぬ冷たい"気"

けれど別にクラスに馴染んでいないわけではない。

"そういう"立ち位地なのだろう。

――この男がなんとかなっているのなら私も大丈夫な気がする。

なんとなく、だが。

ふと、マサキの方を見ると、なんだかニヤニヤとこちらを見ていた。

私が困ってるのを見て楽しんでいるようだ。

助けてくれてもいいと思うのだが。

「神無月さん？どうしたの？」

その声で意識がこちら側へ戻される。

そういえばまだ話の途中だった。

「大丈夫。それで？」

「うん、それでね――」

私は２つの視線を感じながら話を続けた。

――ああ、疲れる。