【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ17)

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第拾伍話ページ17

「さ、マサキはそろそろ帰った方がいい。さっきも言ったが、夜は危険だ」

と言え、引き留めているのは私なんだがな。

Aは苦笑する。

「それから、このことは誰にも言うな。約束、私と君だけの秘密だ。もちろん、名前のことも。破ればマサキは私の晩飯だからな」

「わかってるって……」

さすがにそれだけは勘弁してほしい。

さらっと言っちゃうところが人離れしちゃってるんだろうな。

冗談に聞こえない。

「それでいい。じゃあ、"さよなら"」

別れの言葉を告げられる。

なんだか、もう二度と会えないような、そんな気がした。

――近づきたい。

今行かないと、ダメな気がする。

何か、言わなきゃ。

ここにいるために、言わなきゃ。

「ああ」

頭では理解しているのに、出てきた言葉はなんとも素っ気ない言葉だった。

考えれば考えるほど、言葉が消えていく。

仕方なく帰ろうと、Aに背を向けた時だった。

「……待て、マサキ」

呼び止められた。

返事をする間もなく続ける。

「また……会いに来てくれるか？いつでも構わないから……」

あの時と同じ、寂しげな瞳。

放っておけない。

「もちろん。友人なんだろ？」

ニヤッと笑って言ってやった。

「そうか……はは、そうだな。マサキと私は友人だ。じゃあ……"また"」

――それから、"ありがとう"

Aは笑っていた。

それがどういう意味なのか、俺にはわからない。

そもそもありがとうと言われた理由すらわからないし、"わかりたくもない"

「うん。じゃあまた」

だから俺は、ただそう言うだけ。

最後の言葉が聞こえなかったふりをする。

なぜならAにとって俺は、ただの退屈しのぎでしかないのだから。

幾百年の中の、ほんの数年、いや、数ヵ月の出来事。

ありがとうなんて言われるほどのことなんて出来ない。

――それでもいい。

今は、純粋にAのことをを知りたい。

"悪魔さん"の真実を。