【神威】恋の病に薬なし

馬鹿 ページ10

俺の目に映ったのは


疲れきった目をしたAの姿









首筋を手で押さえて
とぼとぼ俺の部屋を通り過ぎてゆく。









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「…何かあった？」







『……や、別に何も。』









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へら、と笑って
自分の部屋に戻ろうとするAを









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「っちょ、待って。」









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無意識に止めていた。









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面倒臭そうに立ち止まり
俺を見やるAに近付く









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よくよく見ると、

Aの服は少し乱れていて
肌にはほんの小さなひっかき傷が数ヶ所。








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首を押さえている手を無理矢理掴み
引き剥がすと









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そこには赤い小さなアザが

痛々しく残されていた。









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「……、どうしたのこれ？」









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いつも通りとぼけた明るい声で問うが
内心複雑な気持ちが要り混じっている









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Aは、だるそうに小さく口角を挙げて









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『高杉とやらにやられちゃった。』









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勢い余って殴り飛ばしちゃったけど
あいつ大丈夫かな。









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なんて、自分は襲われかけておいて
相手の心配をしている。









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……何こいつ、馬鹿じゃん。

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