【神威】恋の病に薬なし

照れくさい ページ29

『じゃ、行ってきます』



「おう、気をつけてな」








ここを離れるのが少し寂しくて

小さく阿伏兎に手を振ってみれば

苦笑まじりに手を振り返してくれた









「なんだその顔
随分とぶすくれてんぞ」


『仕事し過ぎて阿伏兎がぶっ倒れないか心配で』

「俺の心配かよ！」









まァなんとかやるわ、と

頭をポリポリ掻いている






その陰から、通常通りニコニコ笑っている
神威が歩いてくる







「相変わらずブッサイクな顔」



『黙れ死ね』

「冗談冗談」









じゃあね、と何となく感じた寂しさを隠して
小さく手を振って。





神威は目を見開いたと思えば
私から瞬時に目を反らした




『え、何』



「‥‥‥やっぱ帰ってこなくていいや
逝ってきて」

『ふざけんな。死んでも帰ってきてやる
再会の抱擁の代わりに宇宙に投げ飛ばす』



「今から投げ飛ばされんのはAでしょ」


『私は帰ってこれますから！』







そう言えば

少し微笑んで、私に背を向けた









『‥‥阿伏兎
気持ち悪いくらいににやけてるよ』




「甘酸っぱいなァと思っただけだ」

『どこにそんな要素が。』






いいから行ってこい。

そんな阿伏兎の言葉を合図に私は
小型宇宙船に乗り込む。







その数時間後。


無論私の宇宙船は不時着

「何やってんの誰だオイィィィ！！」





そんな銀髪頭の声がした。

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