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『大好きだよ、テヒョン・・・』
そう言えば、テヒョンは柔和な笑みを浮かべてもどかしそうに首の後ろを掻いた。
何もかも私がしたことなのに、どうしようもなく苦しい。
「なんでAが泣いてるの、」
「幸せになるんでしょ、Aは」
大きくて少し冷たい手が私の頬を撫でる。
その体温が私たちの終わりを告げるようだった。
テヒョンと過ごした日々はすごく幸せだった。
水みたいに透明で綺麗だった。私の全部を許してくれる、そんな優しい世界。どんな時もテヒョンは私のことばかり考えて、未熟な私に大きな愛をくれた。テヒョンは自分に傷を作ってでも相手を想い愛す人だ。
自分の損得なんて何も考えてない。
相手の幸せを願い、その為なら何だってしようとする人。
その優しさの一片に触れて、全部呑まれて何も見えなくなった。
テヒョンが傷付いてる事も、時折泣きそうな顔をする所も、分かっていたのに。
「今更そんな顔するなよ」
『…、』
「またAのこと好きになっちゃうじゃん」
俺の気が戻らないうちに、早く行って?
・・・_____
___
冬はすっかり色を変えてまた暖かさを灯す春へと近付きはじめていた。
桃色の蕾が並木にぽつぽつと温もりを馳せて
過ぎ去った日々は一瞬のように思える。
ねえ、ジョングク。
いつから私はこんなに我儘になっちゃったんだろう。
何にもなれなかった私が
ジョングクの大切な人になりたいだなんて。
ジョングクの綺麗な初恋が叶うことが
何より望むべきはずなのに苦しくて。
またいつものように、子供みたいな笑顔を見せたジョングク。
ついこの間までとはまた違う雰囲気を見せたジョングクに胸がひやりとした。
「A、俺_____」
『待っ、て。』
叶わないことくらい分かってる。
分かってるけど、聞きたくない。
ジョングクが今から言うことがどんな事なのか
もうそんなのひとつしかないから。
『…好き、ジョングク』
「え?」
流れる空気を止めるように咄嗟に伝えた言葉がジョングクを遮った。
真っ黒で大きな瞳が私を映し出す。
きょとん、とした顔で見つめてくるジョングク。
恋だのなんだのと教えておいて、ただの代わりの癖に貴方を好きになってしまった私を笑うだろうか。
あの日私たちが出会っていなければ
ジョングクの「好きな人の代わり」になんてならなければ。
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chi134340(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。終わってしまって寂しい気持ちもあって複雑…。またてこさんのお話を楽しみにしています。 (2021年9月11日 12時) (レス) id: fae26ba036 (このIDを非表示/違反報告)
JK1223(プロフ) - このお話大好きです…!更新されているとめちゃくちゃテンションが上がります!!下の方のようにテヒョンとうまくいって欲しいと思う反面…グクとグズグズになれーー!とも思ったり…( ; ; )これからも応援してます(*^_^*)頑張ってください!!! (2021年8月31日 22時) (レス) id: f8bf9f9746 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - どうかテヒョンを好きになってそのままでいてください! (2021年8月23日 3時) (レス) id: a67dcb29eb (このIDを非表示/違反報告)
えま - もはや切ない。。とっても面白くてハマっています!これからも更新頑張ってください! (2021年8月18日 10時) (レス) id: d6d16a0d4e (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - すごくハマってしまい、Twitterで写真付きでみて、占つくで読み返して噛み締めるという事をしてます笑笑更新楽しみにしてます! (2021年8月17日 15時) (レス) id: 8165b878e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huumi0000/
作成日時:2021年8月10日 22時