アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃１１「アイするカノジョ。」 ページ48

傑「…悟、なぜAに術式を行使している!?まさか、殺したのか!?」


悟「…Aはもういない。」


そう虚ろな目をして、悟は答える。
目が合って居るはずなのに、どこか遠くを見つめているようだった。

そして、彼は廃人のように歩き出す。
傑は、そんな悟を呼び止める。


傑「おい悟!!ちゃんと説明をしろ!!彼女がいない、それはどういう事なんだ!?」
悟「…そのままの意味だろ、わかれよ。」
傑「わからない!!わかるはずがないだろう!?」



悟「わかってくれよ!!」



彼が、声を荒らげた。続くように、「頼むから、わかってくれよ。」そう言った声は震えていて。

俯いた顔からは、多くの雫がはらはらと落っこちる。

傑は、その様子を見て全てを悟った。
そして、この薄暗い会場内を見渡した。

眩い一番星の生まれ変わりを、見つけ出すために。



傑「………嘘だろ。」



視界に拡がる夜空には、星なんてなかった。

そのどうしようもない現実に、彼らは俯く他ない。
そんな彼らの元に、硝子は駆けつける。


硝「ちょ、どーしたのあんたら!?」


大きい男ふたりが、ただ立ちつくして涙しているこの状況に驚きの声をあげた。
話せない状態の悟に変わり、傑が仮定で事の経緯を伝える。



傑「……悟が、Aを終わりにしたんだ。彼女はもう、この会場の空気と一体化しているだろう。」



その言葉から、自分が終わらせてしまったのだと改めて自覚してはまた小さく声を上げては、それを押し殺して涙を流す。

そんな哀に塗れた2人を見ながら、硝子は後ろを指さした。



硝「あんたたち、何を見て言ってんの？そこに倒れてるじゃん、A。」
悟・傑「「…へ？」」



灯台もと暗しとはこのこと。
まさに、足元のステージ下に彼女は倒れていた。

収束を使って削り取ったメインステージ上は、言葉の通り無くなっていたが小規模の『蒼』の影響を受けなかった箇所に彼女は逃げていたのだろう。

彼女が目を覚ましたときに、聞かなければいけない。



悟「っ…A、A!!」




悟は彼女の元に駆け出す。そして、優しく上半身を抱き寄せては、彼女の身体を確かめる。



悟「……人間だ、息もある……A、良かった……本当に、良かった…!!」



彼女は、きちんと人間として存在していた。
寝顔ですら彼女は魅力的で、その閉じられた瞼に優しくキスを落とす。

長い睫毛が、少し揺れたような気がした。








それはおとぎ話のよう。
お姫様は、王子様のキスで目覚める。

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