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S「どうしてか、なんて………簡単だよ。」
窓際に立つ先生は窓枠に体を預けて腕を組んだ。
先生の口から紡がれる言葉ひとつひとつに何故か、緊張が走る。
その先の言葉が口にされたら、私は、私の中の何かを、壊してしまいそうで、壊れてしまいそうで。
壊れてしまわぬように、じっと、耳を傾けた。
S「キャンプファイヤーのフォークダンスに誘われまくって逃げてきたらお前という先客が居たんだよ。」
……なるほど。逃げ道として考える事は同じ、だと。
『………モテる先生も大変ですね。』
カシャ。
S「いや、もっとカッコイイ人いるだろ。先生でも生徒でも。それこそ、松潤とか。あと、なんでサラッと撮ってるんだよ。」
『いいじゃないですか、これもひとつの思い出ですよ。』
S「なんだそれ笑」
そう。思い出。此処で一緒になったことも、キャンプファイヤーをサボったことも、私と居る先生の写真が欲しくて、撮り直したことも。
全部、ぜんぶ、思い出。
S「………そういや、自分のとこは撮ったりしないよな、お前。」
『………え』
そういうなり先生は、サッと私のスマホを奪い取っていった。
これが窃盗罪ですよ。
…いやそうじゃなくて。
『か、返してください！！』
S「やーだよっ！」
咄嗟に立ち上がって回収を試みるも、いとも簡単に避けられてしまう。
そしてそのまま先生は。
……カシャ。
撮ってしまった。ツーショットで。
『っな！』
S「ふっふっふ。結構上手くね？これ。」
ニヤニヤと笑いながら先生は満足そうにスマホを返してくれた。
……確かに上手いのがムカつく。
『なんで撮ったんですか。消しますよ。』
S「えー、ダメだよ。これも思い出思い出。俺とお前だけの思い出。」
ぐ。そう言われてしまうと、この瞬間の思い出として残したくなってしまう。
『二度と撮りませんよ。』
S「寂しいなぁ。」
寂しくなんかないですよ、先生。1枚だけの方が何枚あるよりも特別になるんです。だから、きっと、私は意地でもこの写真を残すんでしょうね。
6作目：「燃ゆる思い出は火の粉にのって」
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フレンチ糖スト(プロフ) - 翠霞さん» こちらこそ、初めまして。嬉しいコメントありがとうございます。実は私も翠霞さんのお話を読ませていただいていまして、凄くお話の作りが上手いなぁといつも尊敬しながらお話を楽しませていただいています。私も陰ながら応援しています。 (2021年1月18日 18時) (
レス) id: ff01346260 (このIDを非表示/違反報告)
翠霞(プロフ) - 初めまして。いつもひそかにお話を読ませていただいております。フレンチ糖ストさんのお話が好きです。これからも応援しています。 (2021年1月17日 22時) (レス) id: c90e2b0ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フレンチ糖スト | 作成日時：2020年5月30日 20時
