アトリエに残された桜 (ページ31)

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「智くん、上手かったね～結構当たってたし！」

『結構…って言っても半分も当たってなかったけどね』

「いやいやいや！俺なんか一回も当たんなかったし！当たっただけでもすごいって！」

『大袈裟だよ～』

翔くんはすぐやめたから比較対象にはならないのに翔くんに褒められて舞い上がるように喜ぶ俺がいた。褒め上手な翔くんに負けても悔しくはない。

2人で座ってのんびりと休憩を取ると、次は何をしようかなんて話を始めた。どうしてすぐにやめてしまったのかなんて訊くのは野暮だと思って訊いてはいない。というか、完全に忘れていただけ。

「智くんあっちにね、併設のゲームセンターがあったんだけど行かない？」

『ゲームセンター？あー確かにあったかも。いいよ！』

「やった！やりたいゲームあったんだ～」

ウキウキ気分全開で立ち上がってゲームセンターの方へ移動していく翔くんの後ろをついて行く。翔くんが立ち止まった所は車のレースゲームだった。うん、マ◯オカート。

『これかあ。あんまやった事ないけど、楽しいよね』

「智くんやった事あるの？」

『え？うん』

やった事ない、と言った口振り。今まで何度かあった事だけど翔くんはこういう娯楽に対しての経験がかなり少ないような気がする。何かあったんだろうか。気になるけれど、それについて訊くことの方がしてはいけない事のようで訊くのが怖い。

よぎったことを振り払って無かったことにして、早速翔くんと対戦形式でマ◯オカートを楽しむ。折角、遊んでいるんだから気分良く遊ばないと。

「わぁ～ドキドキするね」

コース紹介で流れてくる映像はいつ見ても高揚感を掻き立てて同時に緊張感を誘う。比較的簡単そうで手応えも感じられそうだと選んだ"ふつう"のマリオカップのコース紹介が終わるといよいよスタートのカウントダウンが始まり、これは気合が入るぞと意気込む気持ちからハンドルを握る力が強くなる。

3…2…1…Go！

合図と共に走り出すカート達。スタートダッシュのあの速くなるやつは久しぶりのせいか忘れていて、普通の走り出しになってしまったけれど何とか前を走って行くNPCに追い抜けるように食らいついていくも、何年もやっていないというブランクとそもそも何回もやった訳ではないという経験の無さがハンドルを狂わせる。

「あっ！またぶつかっちゃった」