アトリエに残された桜 (ページ18)

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『いいね、どこ行く？』

内心のワクワクを抑えきれず若干ニヤつきながら俺は聞いた。

「あのね、行きたい場所があるんだ」

翔くんは俺以上にワクワクしているようで今にも飛び出していきそうなくらいに俺の腕を引っ張りながら会計をしに行った。

「ありがとうございました」

会計をしてくれた相葉くんは俺たちの様子から汲み取ったように笑っていてなんだか恥ずかしくなった。俺たちがすごい浮かれているみたいだ。

『あ、ごめんお金…』

「いいよ全然！これから付き合ってもらうんだし」

店から出たところで翔くんの奢りになってしまったことに気付いた。悪いなとは思いつつ、翔くんの言葉に甘えることにした。じゃあ、お礼に何か買ってあげようかな。

『ねえ、どこへ行くの？』

行きたいところがある、とは言っていたものの、どこへ行くとは言っていない。どこへ連れて行かれるのかくらいは知りたいんだけど…

「んふふ、内緒だよ。着いてからのお楽しみ」

内緒なら仕方ないか～。
翔くんは振り向くこともなくああ言ったが顔が見えていなくても言い方が可愛かったのでどこへ連れて行かれてもいいや、という気分になった。

ずんずん歩いていく翔くんに引っ張られたまま、随分歩いてきた。アトリエのある海辺の方の住宅街な感じが抜けて段々と都会な街並みが増え、都会らしい息苦しさが戻ってくる。

と、徐々に翔くんが向かった先が分かるようになってきた。

翔くんの向かう先、そこは1ヶ月限定で開催されているトリックアート展だった。

「ここだよ」

『ここかぁ』

「あれ？来たことあった？」

『いや、マネージャーに前、開催してるって話を聞いただけで来たことはないよ。でも興味あったから楽しみ』

「そっかぁ良かった。俺も行ってみたくてさ」

気の合う二人。
そう思うと嬉しくてテンションが上がった。

早速入場料を払い、中へ入る。

「『うわ～すげえ～」』

入ってすぐに大きなトリックアートが俺たちを出迎えた。あまりの大きさと初めて見たトリックアート作品に二人とも大きな歓声を上げた。

スマホを取り出して写真を撮ったり撮られたり。

この時の俺たちは二人とも来たかったこのトリックアート展に来られたことにテンションが上がり、いい歳した男二人で楽しむトリックアート展という画がなかなかシュールだということにも気付かなかった。