ここで一歩。 ページ21
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前の私なら、どうしていたかな。
何も思わずに、二つ返事で返していたかな。
今の北先輩を見ていては、あまりに辛いから。
…でも。
私はもう経験してしまった。誰かの代わりになること。それが如何に辛いことか。
そして。
"本当にありがとう。ごめんね。"
互いの手枷になってしまうことも。
今にも泣きそうな顔をしている北先輩の表情を見て、息を呑む。
震えた唇が、やっと、動く。
｢…ごめん、なさい。出来ません。私は、それが如何に自分の首を絞めるかを知っています。私の首も、北先輩の首も縛られて。それじゃあ、お互いに辛いだけです｣
初めてだったかもしれない。
出来ないと拒否をした。それが北先輩にとって良いことかは分からないが、少なくとも悪いことではないはずだった。
それに。
｢私はもう、苦しみたくはない｣
ごめんなさい。ここまで来て、また自分勝手だ。
散々北先輩に縋った。北先輩に角名くんを重ねた。
でも。
罪悪感の片隅に、もう傷付くのは嫌だ、なんて都合の良いことを思っている自分も確かにいるんだ。
もう、辛いのはごめんだ。
これ以上、北先輩の悲しい顔も、鏡で見る自分の泣き跡も、見たくはないんだ。
もう一度、同じ過ちを繰り返すくらいなら。私は、北先輩に嫌われたって構わない。
今、北先輩と互いに依存し合って何になる？吹っ切ろうとしている自分の心は、どこにいってしまう？
今の北先輩の表情で、もう、思ってしまったんだ。
――前を向かなければ。
今度は、脳がしっかりと告げている。
自分をもて、と。もう繰り返すなと。
｢致命傷になるのは、北先輩なんです｣
考えてみてほしい。私とハルを重ねたとして、ハルは相変わらず愛されて。
それを北先輩は、何を思い見ることになるのか。北先輩は、どれほどの苦痛を伴うのか。
｢…私はもう、見たくない｣
北先輩はもう分かっているはずなんだ。それでも、北先輩はハルへの想いを何とかしたくて、こうして私に提案している。
…いや、多分半分は私のため、半分は自分のため、ってところかな。
北先輩は優しいから。きっとこれは自惚れでも勘違いでもない。
北先輩の優しさは、時に自身の首枷になる。
｢…ほうか。なんや、すまんなあ。迷惑、かけて｣
こっちのセリフ。
迷惑をかけた。謝りたかった。でも、北先輩の目から、涙が、落ちてくるのを見て。
目を見開くことしか、出来なかった。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
