歪。 ページ19
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｢…無理、です。そんなの、出来ません。それじゃあ、昔の私の役目を北先輩がするようなものじゃないですか。好きな人を好きでいるために、北先輩に代役をなんて、出来るわけがない｣
怖い。何より、自分が怖い。
きっと少しでも気を緩めたら、北先輩のこの提案に二つ返事で返してしまう。
だって、都合が良いのだ、私にとっては。
本心では、吹っ切れたつもりもなく、忘れようともしていない。そんな私にとって、角名くんの存在はあまりに大きすぎて。未だ自然と追ってしまうその影に、嫌気がさしてしまうほどに。
でも、だからと言って。
ぽっかりと空いた穴を埋めるために、北先輩を利用しろ…？
ふざけてる。
どっちが傷付くかなんて、簡単に想像出来てしまう。
｢…俺のためだとしてもか？｣
目を、見開く。
北先輩の眉毛が、下がる。切なげな表情。唇が震えている。
｢…俺も、ハルを重ねてまうんや｣
ハル。さっきは晴山だったのに。北先輩は、間違いなくハルのことが好きで。でも、ある期間から全くと言って良いほどに私への恋愛相談が無くなった。
その理由は知っていた。北先輩が私を助けると言ってくれたあの日に知った。私が苦しんでいるのを知って、私への恋愛相談をやめたのだと。
だとしたら。
北先輩は、誰にも言わずに密かに恋焦がれていたことになる。侑とハルが付き合った後も、ずっと。
一人で、ずっと抱えて。
なのにさっきは、私をあの場から助けてくれた。ハルを侑に託して、私のみを連れてハルに受け答えをして。
…辛かっただろうなあ。
北先輩の本音を、私は聞いたことがない。恋愛に関する弱音、と言った方が正しいかな。
ハルに好きな人はいるのかと前に聞かれたことがあった。当時はハルへの男バレ部員の好意が面白くて、積極的に恋愛相談を受けていたから。
いないですよ、と答えたら。
"…ほうかあ。おおきに、な。"
と柔らかく笑って、私の頭を撫でるのだ。本当に嬉しそうに、まるでお年玉を貰った子供みたいだった。
あの笑顔は。
普段の北先輩がする顔とは思えなくて、今でも脳裏に焼き付いている。
そんな北先輩が、私に、ハルを重ねている？
だとしたら、これは、この提案は。
｢北先輩を、助けるための提案でもあるんですか｣
自然と言葉が出た。北先輩が、儚げに笑う。
｢…そうかもな｣
嗚呼、なんだろう。
これじゃあ、まるで。
歪んで錆びた、共依存。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
