004 ページ15
コップを片付けボーンズ達の所に行くよと言って部屋を出ていく英二を見送る。変な所で気を使うんだな、と思いながら同じく英二を見ていたアッシュを振り返る。
『ん』
「…」
腕を広げればゆっくりと抱き着いて来た。暫く点滴で過ごしていたと言っていたからストレスは相当なものだったのだろう。まだ安心できる状況ではないが少しでも安らぐ事が出来れば良い。
『なあ、アッシュ』
「なに？」
『かの有名な作家は“魔法は存在する”と言ったんだ』
「？？」
正しくは小説の一端にそう書き記していた、だ。不思議そうな顔で見つめてくるアッシュに微笑んでその頬を撫でる。
『俺はその“魔法”を純粋な信じる心と解釈したんだ。サンタクロースだとか、妖精だとか天使だとかを存在すると思える純粋な心だ』
「…」
『なあ、俺たちにも“魔法”は使えるんだぜ？』
「…使えないよ、そんな綺麗な心は俺にはもうない」
『ほんとに？』
頬を両手で包んでコツンとおでこをくっつける。不安を泳がせた瞳をじっと見つめながら次のセリフを待つ。何度か口をパクパクさせながらようやっと声を出した。
「魔法が使えるとして、俺たちはどうなるんだよ？」
『はは、そりゃ勿論空を羽ばたくのさ』
そう言うと今度は驚きで目が見開かれた。おお、瞳孔が縮まったと場違いにも思いながら少し顔を離した。
『俺たちは大空を自由に飛び回る鳥になるのさ』
「…そんな、そんなの……」
『なれっこないって？さあ、それはどうかな？アッシュ、純粋な信じる心はお前にもあるぞ。自分を恐れるな』
目を見開いたまま固まってしまったアッシュを抱き締めて、そしてその頬にキスをしてからシンの様子を見に行こうと背を押した。
カチコチとぎこちなく歩きながら部屋を出る。
「Aは凄いな…」
『どうして？』
「心が落ち着く」
『そりゃあ彼氏ですから』
数秒見つめあってクスクスと笑う。年相応の穏やかな笑いを見るととても安心する。アッシュは笑えるし愛する事も出来るし愛される温かさも幸せも知っている。彼を悪魔だなんて宣う奴らはクソ食らえだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆうな(プロフ) - 葵さん» わ〜ほんとですか！？嬉しいです！！そうなんですよ〜！色々突っ込んでたら５作品目になってしまいました笑ありがとうございます！頑張りますね！ (2019年1月4日 18時) (
レス) id: b1153871a1 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 全シリーズ読ませてもらってます！もう5作品目ですね！！いつも楽しみに読んです！これからも応援してます！頑張ってください！ (2019年1月4日 15時) (レス) id: 0416d8cced (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうな | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org
作成日時：2018年12月31日 22時
