魔人の悪友さん。４【文スト】

世界との心中 ページ4

この世界に完璧はない。

平等も平和も机上の空論に過ぎないのだと誰かが言った。

すべの人類は罪を背負っていると幼馴染は言った。

そして完璧なものなど存在しないことを幼いながらに知った。

ならば

「ボクは一体何だというのだろう」

待機している廃棄ビルの屋上でボクは下の道を闊歩するヨコハマの人々を見た。

これから起こることを、水面下で広がる火花に誰も気づかない。

それが幸せなのだろうか。

心の中で願う。

生まれ変わった彼らが何も怯えず、何も賭けず、誰にもその友情を恋慕を敬愛を忘れることなく。

恙なく“何も知らない”という平和であれば。

自分の中にある影を持ち美しく生きる人々の声を聴く。

それは平和そのもので。

「ボクたちが、ボクがこれからすることを一生恨んでください。だからどうか、神様。いつか死にゆく彼らを、どうか」

願う。

手を重ねる。

「ボクとは違う、一寸の平和をお恵みください」

それは自分への蔑視。

願う。

「異能者などもともと存在しなかった、異能者がただの一般人になる世界に」

何処かで、大きく爆発音が響いた。






森鴎外にウイルスを仕込んだフョードルは変装の警官からいつもの姿に変わった。

「フェージャお帰りぃ！！」

これでもかというほど大きな声でAはフョードルの影から飛び出した。

「すごかったねぇ」

「えぇ、貴方の力のおかげで助かりました」

「でしょでしょ」

先ほど、森にナイフを刺し群衆の中に消える前、森の異能である幼女が飛び出してきた。それを群衆の影を操作することで巨大なカーテンともとれるものを作り出したのだ。

それによって異能生命体はもちろん、群衆すらもパニックに陥ったのだ。

フョードルは悪友の姿を見る

「…」

「どうしたの？」

「いえ、なんでもありませんよ」

その紫水晶には一瞬知らない色が移った。

だが知らないふりをした。

もうすでに“紅色”になってしまった瞳など知らない。

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