マーキング3 ページ25
目の前に立つ彼の手がこちらに伸びてきて、猫っ毛を触った。
触れられて動いた毛先が首をなぞり、思わずAはビクリとする。
優しく髪に触れた中原の手は、そのまま軽く髪をまとめて首元を露出させる。
そして、ポケットから取り出した香水を首元へ。
突然首元に吹きかけられた香水が冷たくて、再度Aはビクリとした。
彼女の反応をみて、中原が笑う。
「ふっ。ビクビクしすぎだろ。」
「中也さんが急に触るからっ!ていうか何かつけました!?」
いつもより少し大きい声で言い返すA。
彼女を完全に揶揄っている中原は、手でまとめていた猫っ毛を自分の口元に近づけてそのまま唇に寄せた。
さすがに少し恥ずかしくなったのかAは顔を背ける。その時、自分から嗅ぎ慣れない香りがして、彼の香水をつけられたのだと気づいた。
「…中也さんの匂いする」
中原は彼女の言葉に少し顔を赤くして、触れていた髪を離す。風を切る音が聞こえそうな勢いで、視線を彼女から外して思いっきり横を向いた。
「ばっ…!お前、ほんと…。よくそんな事ケロッと言えるよな…。」
その反応を見てAは思う。
(あ、いつもの中也さんだ。そうだよねぇこの反応が中也さんだよ。さっきのグイッとくる感じとってもレアなやつ。…また見たいなぁっ。)
楽しそうな玩具を見つけた子供のように彼女の瞳が輝いているように見える。
中原は、彼女からふわっと香る匂いが自分と同じ事に満足げな様子で、エレベーターに近寄りボタンを押した。
その光景を見て、今度こそ森の所に連れて行かれると確信をしたA。
しかし。エレベーターのボタンは下の階に降りるように押されている。
「あれ、下の階…」
「あぁ?上に行きてぇならそうしてやるが?」
「行かないです!行きたくないです!下でお願いします!帰ります!」
息継ぎなしで早口で答えるA。
「ボスも無理にとは言わないっつってたし。まぁいいんじゃね?今日のとこは。」
中原の言葉の終わりと共にエレベーターが到着。
2人が乗ったエレベーターは下へと降りていくのだった。
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かんぷ(プロフ) - せなさん» ありがとうございます☺️最近忙しくてなかなか更新できないのですが、読んでくださって嬉しいです☺️良ければまた読みにいらしてください (1月12日 21時) (レス) @page22 id: e2bef6b9e2 (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - シンプルに言います。神ですね (1月9日 2時) (レス) id: fdd34e7dad (このIDを非表示/違反報告)
かんぷ(プロフ) - ふぁぁんでぇすさん» コメントありがとうございます。本当ですね😢すみません😢修正します。ご指摘ありがとうございます! (10月16日 21時) (レス) id: 6c4057c318 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁぁんでぇす - 太宰さんの一人称「私」だったような(-.-) (10月16日 21時) (レス) @page5 id: 138a5f5117 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんぷ | 作成日時:2023年10月10日 1時