マーキング1 ページ23
Aと中原は暗い廊下を歩く。
「中也さん、次の仕事って何ですか?」
「あぁ…仕事っつーかボスが呼んでる。」
Aは、自分の質問に答えた中原の返答を聞いて歩みを止める。
隣を歩くAが、視界から消えたため中原も足を止めて振り返った。
彼女は非常に嫌そうな顔をして眉間に皺を寄せる。
「……え?」
2人のあの距離感で会話が聞こえない、なんて事は考えにくいがAは聞き返した。耳を疑いたくなる事実なのだろうか。
中原はそんな彼女の反応を見て楽しそうに口角をあげて、
「ボスが!呼んでる!」
「え、えぇ……。なんで…何の用ですか…。」
「俺が知るかよ。ったく。グダグダしてねぇでさっさと行くぞ!」
痺れを切らした中原は、Aの右手首を掴み構わず歩き出す。
「ちょっと!離して!中也さん!はーなーせー!」
Aは力いっぱい抵抗するが、男の力には敵わない。
まるで駄々をこねる子供が親に無理矢理手を引かれる構図。
「昔っからだけどよ、何でそんなにボスの所行くの嫌がるんだ?」
「苦い過去の記憶があるんですよ、」
引きづられながらそう話すAの頭の中では、彼女がもう少し幼かった頃、森が溺愛するエリスと共にリボンやレースがあしらわれたワンピースを着せ替え人形の如く着せられたり、仕事で少し怪我をしようものなら大騒ぎをして治療をしようとし、自分の後をうんざりするほどしつこく追いかけ回して体の具合を聞いてきたり…この手のエピソードが尽きずに思い出されていた。
(森さんは人を愛でる事はしても愛す事はしない。徹底的な論理主義。ああいう人は思考が読みにくいから少し苦手なんだよなぁ、まーあの太宰さんに色々教え込んだ人だから、読みにくいのも無理ないけど。でもそんな事よりあの人のあの癖どうにかならないのかな…)
中原は、ふーんと興味なさそうな反応。
行き止まりに立った彼は、壁に設置されたエレベーターのボタンを押す。
チーン、という機械音と共に扉が開き、中には黒いスーツを身に纏った男が中原に礼をする。
「おら、来たぞ。乗れ!」
中原に腕を掴まれたままのAは仕方なくエレベーターに乗り込んだ。
エレベーター内で、Aは何やら自身の腕や洋服の襟などに鼻をつけて匂いを嗅ぎ出した。
「んだよ、騒がしい奴だな。」
Aに向き合うように壁に寄りかかっていた中原が言った。
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かんぷ(プロフ) - せなさん» ありがとうございます☺️最近忙しくてなかなか更新できないのですが、読んでくださって嬉しいです☺️良ければまた読みにいらしてください (1月12日 21時) (レス) @page22 id: e2bef6b9e2 (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - シンプルに言います。神ですね (1月9日 2時) (レス) id: fdd34e7dad (このIDを非表示/違反報告)
かんぷ(プロフ) - ふぁぁんでぇすさん» コメントありがとうございます。本当ですね😢すみません😢修正します。ご指摘ありがとうございます! (10月16日 21時) (レス) id: 6c4057c318 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁぁんでぇす - 太宰さんの一人称「私」だったような(-.-) (10月16日 21時) (レス) @page5 id: 138a5f5117 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんぷ | 作成日時:2023年10月10日 1時