喫茶処2 ページ3
だがAは一度言葉を堪える。太宰の横でどうしたら良いか分からなくなっている店員を気遣い、
「珈琲とココアください。」
店員ははい、と返事をして太宰から離れて足早に去っていった。
「わざわざ君が取引現場にくるなんて珍しいじゃないか。」
太宰は去っていく店員の後ろ姿を視線で追いかけながら言った。
その言葉に先程と同様に眉をひそめるA。ため息を吐きながら誰も座っていない華奢な銀色の椅子に腰掛ける。
「よく言いますよ、あの店員さんに私の異能力が発動してるって知っててあの人の事触った癖に。おかげであの店員さん操れなくなっちゃったからわざわざ来たんですよ!ぜーーんぶ分かっててやってるくせに!」
彼女は最後に、全く。とぽつりと呟きまたため息。
「だって君、取引には代わりの人を寄越すだろう?君の異能は視認できる範囲でしか使えない。だから異能を解いて女の子を口説いていれば君がすぐに来ると思ったのさ。
ーーーなにせ、私はAに会いたかったからね」
太宰はそう言った後彼女に向かってウィンク。
「私も太宰さんに会いたかったです」
Aの言葉に数回瞬きをする太宰。そんな彼の動揺とも言えないほんの僅かな変化に気づいているのかいないのか彼女は言葉を続ける。
「だって例の“虎”君の新しい情報が入ったから。早く伝えた方がいいかなって。」
そこへ、席を案内してくれた店員は太宰を警戒しているのか今回は別の男性店員が2人のいるテーブルにやってきて、慣れた手つきで珈琲とココアを置いていく。
Aは会話の合間に注文を運んできた店員ににっこり笑顔でお礼を言う。
店員は何か言いたそうにしていたが、ごゆっくり。と声をかけて次の客の元へ。
2人は運ばれてきた飲み物を飲みながら
「それで、虎がどうしたって?」
「とある施設を襲撃した後、被害はこの地域に集まってます。最後の目撃情報は昨夜、鶴見の辺り。」
「ふむ、なるほど。最新情報だね、さすがだよ」
「さらに気になる事がもう一つ。その例の虎に狙われてる、って騒いでる男の子がいます。ーーー会いたいですかっ?」
彼女は太宰に褒められたからか得意気だ。
「あぁ、そうだね。ぜひ会いたいな。」
「それならーーー川、ですね」
太宰はベージュのコートのポケットに手を突っ込んだままほんの一瞬何かを考えた後
「なるほど。“川”ね、、、入水でもするかなぁ」
ヘラっと笑うのだった。
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かんぷ(プロフ) - せなさん» ありがとうございます☺️最近忙しくてなかなか更新できないのですが、読んでくださって嬉しいです☺️良ければまた読みにいらしてください (1月12日 21時) (レス) @page22 id: e2bef6b9e2 (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - シンプルに言います。神ですね (1月9日 2時) (レス) id: fdd34e7dad (このIDを非表示/違反報告)
かんぷ(プロフ) - ふぁぁんでぇすさん» コメントありがとうございます。本当ですね😢すみません😢修正します。ご指摘ありがとうございます! (10月16日 21時) (レス) id: 6c4057c318 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁぁんでぇす - 太宰さんの一人称「私」だったような(-.-) (10月16日 21時) (レス) @page5 id: 138a5f5117 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんぷ | 作成日時:2023年10月10日 1時