黒帽子が三つ ページ4
Aが探偵社に着いたのは、国木田から怒号の電話がかかってきてから5分後のことだった。
風に煽られてぼさぼさになった髪を整えながら、Aは気怠そうにドアを開ける。案の定其れを待ち構えていた国木田が、半目のAに詰め寄った。
「A遅いぞ!いつも時間に気を付けるお前が如何した!」
「色々と事情が重なりまして。昨日と同じ時刻に家を出たのですが」
すみません、と頭を下げるAの言葉は落ち着いており、国木田も納得したように自席へ戻っていった。
「で、結局その事情って云うのは何だったのだい?」
完全自 殺読本という余りにも物騒な題名の本に視線を注がせながら、太宰が問いかける。
椅子に浅く座り、書類が山積みになった机の上に足を乗せるという、探偵社員たる者恥ずべき格好の彼を一瞥し、Aは躊躇なく事実を述べた。
「なめくじと会っていました」
「……はい?」
「いや、だからなめくじと」
太宰はAの言葉を遮るように立ち上がる。そして、手で顔を隠すようなポーズをしながらゆっくりと首を横に振った。
「Aちゃん。詳しく聞かせてもらおうか」
Aは全く動じること無く頷く。
「はい。
私は何時ものように出社の為家を出ました。暫く歩いていくと、道の中央に黒帽子を見つけました。興味が湧いた私は近寄ります。よく見てみるとそれはちびっこマフィアの所有物ではありませんか。
どうしようかと悩んでいると無性に背中が痒くなり、手に持っていた帽子を被って背中を掻きました。
するとあちらからなめくじ張本人が走ってくるではありませんか。少々弄んでからこちらに向かいました」
丁寧な説明どうも、と太宰は黙り込む。内容が差し支えただろうか、とAが首を傾げたのと同時に、太宰は愉快そうに笑い出した。
「つまり、中也は帽子を被っていなかったんだね?」
「はい」
「余計に小さいじゃないか!」
太宰はそのうち椅子から転げ落ちた。それでも笑い足りないのか、床を転がって笑う。
気持ち悪い。
Aはその様子を不思議そうに眺めていた。
よく分からないが、面白いのならそれで良いだろう、と。
また中原に遭遇しないことを願った。
〜・〜・〜・〜
総合最高9位、関連最高1位ありがとうございます!
嬉しすぎてTwitterやリビングで騒いでおりました......。
これからも中原さんの黒帽子。をよろしくお願いします!
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ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» TKです(( 文才ないので渡せませんw (2017年7月28日 21時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - そうですね!!TKですね!!…文才くださいw (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» コメントありがとうございます!TK(中也はかっこいい) (2017年7月28日 21時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 中也かっこいい・・・そして、いろいろと羨ましいぞ、夢主ぃぃぃぃ!! (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
深井さん(プロフ) - 千夜ママンさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです♪中也の腹筋絶対に割れてますよ……サワサワ……← (2017年4月25日 18時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:深井さん | 作成日時:2017年4月9日 20時