黒帽子が十三つ ページ16
私は仄暗いコンクリートの壁の前で漫然としている。
四方八方灰色の壁。成程、此処は部屋の中だ。しかし窓や扉は無い。……なら私は何故中に入ることが出来たのだろうか?
無意識に後ろを振り向く。黒帽子を頭に被りながら
辺りを見回す男性。彼は私の視線に気づくとこちらに向かっておもむろに歩いて来て──
「──っていう夢を見るんだよ」
この季節としては暑い昼頃。ぱさぱさのサンドイッチを薄めの茶と共に胃袋へ押し込みながら、Aは谷崎に話す。
半目の彼女。更に今日は目の下にくっきりとクマが表れており、谷崎は其の夢が如何に悪夢なのかを察した。
「朝から彼奴の夢を見るなんて、私はとんだ不幸者だね」
「はあ……」
「それも毎日。罰を下すならそんな遠回しにしなくても良いのに、まったく神様は駄目な奴だ」
空になったコップに茶葉と熱湯を注ぎ、Aは頬杖をつきながらスプーンをくるくると回した。
谷崎は何を云えば良いのか迷いながらも相槌を打つ。何かある度に神様神様と嘆いているのにそんなこと云って良いんですか、と突っ込みたい気持ちを何とか抑えて苦笑する。
きっと神は激怒した。彼女の身に一体どんな祟りが起こるのだろうか。
一方的に愚痴を吐いていた彼女がコップに口をつけたとき、右手に日の丸弁当を持って太宰が登場した。
「やあ2人とも!」
「どうも」
一言そう返し、Aは残ったサンドイッチをちまちまと噛み始めた。太宰はその様子を眺めていた。
そのうち国木田に呼ばれ谷崎が部屋を出ていった。Aは咀嚼しながら「んー」と左手を挙げた。
「ところで太宰さん」
「何だい?」
Aは先程まで谷崎に聞かせていた話を太宰にも話し始めた。余程気分を晴らしたいのだろう、途中から声に怒りが含まれていた。
何故か息を切らしながらAが話し終える。太宰はにやにやとしながら衝撃的な一言を放った。
「Aちゃん、其れは恋だね」
「……こ、い」
「恋」を経験したことの無いAにとって、其れは未知数の世界だった。漫画やドラマの中の話だろう、とまるで他人事の様に割り切っていたものが今自分に起きている。実感のわかないAは首を傾げた。
「こいって、池に住んでるぱくぱくしたやつではなく?」
「何時もボケないのに今実践するんだね?」
其方じゃなくて感情の方だよ、と太宰は軽く笑いながら云った。
Aは眉を微かにぴくりと動かした。
「何を云っているんですか。あんな奴の何処が良いんですか?大体彼奴に魅せられる所なんて──」
……無い筈なのに。
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ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» TKです(( 文才ないので渡せませんw (2017年7月28日 21時) (
レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - そうですね！！TKですね！！…文才くださいw (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» コメントありがとうございます！TK(中也はかっこいい) (2017年7月28日 21時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 中也かっこいい・・・そして、いろいろと羨ましいぞ、夢主ぃぃぃぃ！！ (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
深井さん(プロフ) - 千夜ママンさん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです♪中也の腹筋絶対に割れてますよ……サワサワ……← (2017年4月25日 18時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：深井さん | 作成日時：2017年4月9日 20時
