黒帽子が十二つ ページ13
「……と言うか、あの2人何とかなりませんかね」
「嗚呼……」
Aは、未だ戦闘を続ける敦と芥川に視線を移す。
「何時までもあの調子なのは流石にどうかと」
止まない戦闘、増え続ける野次馬。静かで人目につかない所を好むAにとっては最悪の状況であり、短時間でストレスが蓄積していくのも当然のことだった。
普段表情が乏しい彼女の感情が端的に表れているのも、此れが原因なのかも知れない。
何にせよ、決して良い空気では無かった。
「どうにかして辞めさせたいですね」
「出来ればな」
何と弱腰な発言。其れが癇に障ったAは中原の黒帽子をひょいと摘み上げた。
「手前ッ、何しやがる!」
「随分と諦めきったような口調ですね。其れでも幹部ですか」
中原は口籠もる。Aは黒帽子を弄りながら2人を一瞥した。
長らく飛び回って疲労困憊だろうに。平然を装っているつもりなのだろうが、そう簡単に疲れは隠せない。此処に来たばかりの時と比べてスピードが落ちているのが丸分かりだ。
「異能に頼るしか無いですかね」
「……そうだな」
中原が一歩前に出た。足元のコンクリートがバキバキと音を立てながら割れ出す。更に威力が上がる、と思われたその時、Aが右手で其れを制した。中原は不服そうな表情を浮かべた。
Aは黒帽子を床に落とした。そして口元に手を寄せる。思い切り吐き出した息は渦を巻く暴風となり、敦と芥川は壁に叩きつけられた。
黒帽子は宙に舞い上がる。中原は届かない高さに達する前に背伸びで其れを何とか掴んだ。
2人は……気絶してしまったのだろうか。地面に倒れ込んだまま動かない2人を見て、Aは「あっ」と声を上げた。
「威力強すぎたかな……もう少し弱く吐くべきだった」
「……これだから手前の異能に任せたくなかったんだよ……」
中原は頭を掻きながら2人の元へ寄る。Aも後に続いた。
「起きて敦ー、か弱い女性に身体を担がせるつもりか」
「手前か弱い女性だったのかよ」
中原が馬鹿にしたように言った。Aは無表情に「ええ」とだけ返す。どうやら冷静さを取り戻した様だ。中原はつまらなさそうに欠伸をした。
2人の意識は飛んだままで、か弱い女性(自称)であるAと筋肉質な男(自称)の中原は、背に後輩を担いだ。
倉庫を出る。道路には建物の影が重なり、地を黒々と染め上げていた。
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ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» TKです(( 文才ないので渡せませんw (2017年7月28日 21時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - そうですね!!TKですね!!…文才くださいw (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
ちくわの国の深井さん(プロフ) - 姫蛍さん» コメントありがとうございます!TK(中也はかっこいい) (2017年7月28日 21時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 中也かっこいい・・・そして、いろいろと羨ましいぞ、夢主ぃぃぃぃ!! (2017年7月28日 21時) (レス) id: eab093c7da (このIDを非表示/違反報告)
深井さん(プロフ) - 千夜ママンさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです♪中也の腹筋絶対に割れてますよ……サワサワ……← (2017年4月25日 18時) (レス) id: d729c286e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:深井さん | 作成日時:2017年4月9日 20時