灼熱のヒマワリ・3 ページ39
勝手に解釈して深く頷く二人に怒鳴り返す。
なんでこいつらは毎回こう勝手なんだ、と頭痛を覚えたその時だった。
店のドアが開く音がして、ひどく聞き覚えのある声が店内の空気を揺らした。
「こんにちは、渉。少し早かったかな?」
「っ。太輔…」
肩を大きく跳ねさせて振り返ったオレに、二日前とまったく変わらない太輔が、半年前からまったく変わらない微笑みでオレの前に立った。
「…いっ、いらっしゃい、ませ…」
「赤い薔薇の花束をください。十二本」
「っ。…はい」
唇を引き結んで、飛び出しそうな心臓を抑えながら薔薇を手に取る。なんだか顔を見るのが恥ずかしくて、下を向きながら作業していると、太輔の柔らかい吐息が聞こえてきた。
「ふふ。綺麗だね。忙しくて渉の顔が見られなかったからかな。今日の渉は特別綺麗に見えるよ」
「っ」
「あっ。ラッピングとリボンはいつも通り、渉の好きな色でよろしくね。俺が世界で一番大好きな人の、心のまん中に届きますように」
そのセリフに、オレの親指にピシッと痺れが走った。一瞬固まってしまった指から、薔薇が一本すべり落ちた。
太輔が小さく「あ」と叫んだ声が長い針になって、オレの心臓をギュンと貫いてくる。
痛いと、思わず声に出していた。
「渉!大丈夫!?」
太輔がすぐに反応して、カウンター越しにオレの肩を引き寄せてくる。
「痛いの?どこかケガした?」
怪我?…怪我なんて、そんなの。
「…とっくにしてる。知ってるくせに」
「えっ?」
太輔の声に、自分の失言に気づいてハッとした。
「っ!…違う…ごめん」
心配そうに顔を見ようとしてくる太輔から、顔を隠すように慌てて横を向いた。オレはなんて事を言ったんだ。
視線の先には、太輔が買ってくれた薔薇が一輪、悲しげに地面に落ちている。
綺麗に花開いた、綺麗な薔薇が。
「っ…本当に、ごめん。すぐ新しいのを」
「ううん。薔薇を一本追加でお願い」
「え…」
「俺ね、一輪挿しの花瓶を買ったんだ。だから俺用に一本ほしくて。だから花束は残りの十二本で作ってもらえるかな」
太輔が柔らかい微笑みを浮かべながら、地面に落ちた薔薇を指さす。
「ね。お願い」
「っ…わかり、ました」
手早く包んだ一輪の薔薇を差し出すと、太輔が嬉しそうに笑う。
「一輪の薔薇を見るまですっかり忘れてた。思い出させてくれてありがとう、渉」
眩しすぎるヒマワリが、オレの両目をじゅっと灼いた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時