夕立ち、薔薇、ヒカリ・2 ページ25
(…敵わない)
そう思った。オレには真似できない。
親指がぴりっと痛む。
やっぱり太輔とオレは、住む世界も、立つことを許された場所も真逆だ。
月曜日にお披露目される、太輔の初演技。そこで、また新たに、太輔の才能を見せつけられる結果になったら、オレは――どうしよう。
オレの醜い部分がまた、じゅくりと疼く。
「太輔は…」
「うん?」
小さく名前を呼んだオレに、太輔は嬉しそうなまなざしで応えた。わずかに顔を寄せて、オレの声を聞き取ろうとしてくれる。
こんなに透明な太輔の気持ちさえ、信じきれずに疑ってしまうなんて。
なんでオレは、こんなに嫌な人間なんだろう。
こんなんじゃ、光の当たる場所から蹴落とされるのも当然だ。
「太輔は、なんでそんなにまっすぐに、オレを信じられるんだ?」
太輔の首が、小さく傾げられる。
その、純粋な疑問を湛えた瞳にまた、オレの胸がじゅくっとした。
「オレが例えばもし、すごく歪んだ性格だったとするだろ。太輔の事、本当はすごく嫌って憎んでるかもしれない。利用しようとしてるかもしれない。…そんな事は、少しも考えないのか?」
「うん。考えてないよ」
返事は、間髪いれずに返ってきた。顔をあげたオレに、太輔はいつもの、ヒマワリのような笑顔を向けてくる。
「そんな事はいま考える必要なんかない。だって、渉に恋に落ちちゃったんだもの」
太輔の両目が、きらきらと銀色の光であふれる。
眩しすぎて目を細めたら、太輔も眩しそうに目を細めた。
「言ったでしょ。どんな棘を背負ってたって、それが俺が刺した棘であっても抱きしめたいって。嫌われてたら、恨まれてたら、その理由が分かったその時に考えるよ。今は渉が綺麗で可愛いって事実以外に何も知らないのに、渉を疑う理由はどこにもないでしょ?」
「っ」
「それにね、戸惑われてるのは分かるけど、嫌われてるとは思わないから。ふふっ」
くすりと肩をすくませた、太輔のその表情は、オレの背中をムズムズとくすぐってきた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時