花屋の日常・3 ページ3
「今日も横尾さんが花束をもらうかどうか、賭けてたんだ。負けた方がヌタバのコーヒー奢るの。で、俺が勝ったの」
「はあっ!?な、なに賭けにオレを利用してんだよ!?」
「だって他にビックリニュースがないんだもん」
平和だよねー、としみじみ言われて、頭にかっと血がのぼる。
なにが平和だ。
オレはここ半年ずっと、ずーっと、毎日、平和じゃない!
「毎日毎日薔薇ばっかり贈られて、オレの狭い部屋は花瓶だらけなんだぞ!」
叫んだオレをきょとんと見つめた千賀が、無邪気な顔でアハハと笑う。
「良いじゃん、薔薇。いい匂いするし綺麗だし。お風呂に浮かべたら癒されるよ」
「おまえ…他人事だと思って」
「でも正直さあ、ちょっと羨ましいよ。薔薇が十二本だよ?それも、まっ赤な薔薇ばっかり。超、熱烈な告白じゃない」
冷やかすような目でにやり、と笑いかけられて、うっと詰まる。
…オレだって一応、花屋だし…毎回十二本だから、気になって調べた。
十二本の薔薇は、付き合ってください。
赤い薔薇は、愛してます。
抱えた薔薇が急にずしっと重くなったような気がして、はああ、とため息が漏れてしまう。そんなオレを見ながら、千賀はますます笑顔になる。
「そんなロマンチックな人、日本になかなかいないよ。貴重だよ。優良物件だよ。オススメ」
「いや、オススメされても…そんな」
「しかもあの藤ヶ谷 太輔さんだし。あの有名な華道家の藤ヶ谷 太輔さんだよ。告白受ければ横尾さん、一気に勝ち組だよ。玉の輿だよ。羨ましいよ」
「あの藤ヶ谷さん…か…」
そうなんだ。『あの』藤ヶ谷さんなんだ。
イケメン華道家として数年前にいきなり出てきた太輔は、テレビやCMでよく見かけるし、本も何冊か出してるみたいだ。あちこちのホテルやデパートに呼ばれて、しょっちゅう花を生けに行っている。近くに彼の自宅兼教室もあって、太輔が授業や仕事で使う花は、うちで注文してくれている。うちの店はすごく助かってる…そうで。
「今日も薔薇十二本、お買い上げいただいたもんね。さて、忘れないうちに今月の請求書につけとかないと、っと」
なにが楽しいのか、るんるんと鼻歌を歌いながらパソコンに入力しはじめる千賀を、なんとも言えない気持ちで見つめる。そっと薔薇に視線を落とすと、太輔の笑顔が浮かんできて、胸がぎゅうっと痛くなった。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時