薔薇と絆創膏・4 ページ17
オレの心に、ちくりと小さな棘が刺さった。
太輔を、眩しい人を曇らせてしまったという事実がオレの鼓動を激しく苦しいものに変えていく。
そんなつもりなんて、微塵もなかった。
オレの中の、醜い部分がひょっこりと隙をついて出てしまった。ただそれだけの事だ。
百パーセント、オレの心の醜さが原因だ。太輔は悪くない。
「た、太輔、あの…」
「今さ、少し安心したっていったら…渉は、怒るかな?」
「えっ」
返ってきた予想外のセリフに、オレの頭が一瞬まっ白になる。
安心したって…なんで。
あそこで羨ましいって言うなんて、嫌味とも取れるようなタイミングだったに違いないのに。
全部顔に出てたんだろう。太輔は少し困ったように眉を下げてから、それから、いつもの眩しい笑みをオレに注いできた。
「渉の中にある棘のひとつが俺で、今すごく嬉しいんだ」
薄い笑みを湛えながらゆっくり目蓋を動かす太輔は、まるで一枚の絵画みたいに綺麗に見えた。
その美しい瞳が、優しくオレをとらえる。
「渉が棘を背負ったまま生きている姿を見るのは、そりゃあ辛いし悲しいよ。取り除けるなら全部取り除いてあげたい。でもね、俺のせいで刺さった棘なら…その棘ごと一緒に抱きしめたい。傷ついたり、裏切られるような事になっても」
「そ、っ…そんなの…」
「信じられない?でも、俺は本気で言ってるよ」
「っ。なんで…そんな…」
「俺の痕跡が渉の中に残らないことが、一番怖いから。憎悪や嫌悪や羨望でも、何も刺さらないよりはずっと嬉しいよ。そのために俺は毎日、渉に薔薇を贈ってきたんだから」
「え…それ、って」
「ウザがられても構わなかった。まずはマイナスからでもいい、俺を意識してもらいたかったから」
すうっと細くなった瞳に、オレの腰がびりっと痺れた。ぐっと唾を飲んだオレを見て太輔はまた、まばたきをした。
「できるなら、こんな醜い部分は見せたくなかったけどね。ふふ、嫌われちゃったかな」
無邪気な顔で首をかしげる太輔に、オレは、マトモな言葉は何一つ返せなかった。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時