薔薇と絆創膏・3 ページ16
太輔からシリカゲルの入った容器を預けられたオレは、ドライフラワーについて詳しい説明を聞きながら、少し遅めの夕食を太輔と食べる。出来上がったものはビンに詰めてインテリアにしたり、工夫次第で色々と加工して楽しめるそうだ。
見本にと、スマホで写真も見せてもらった。
ドライフラワーをぎっしりと詰め込んだガラス瓶は確かに、透明感に溢れてすごく綺麗だ。見ているだけで気持ちが明るくなった気がした。
「作ってみたい」
と言うと、太輔が嬉しそうに微笑みかけてくれる。
そしてどうせならと、花瓶に生けてる花から綺麗なものをかき集めて、それもドライフラワーにすることにした。オレがシリカゲルに埋めた花の出来上がりは正直、不安だけど…でも太輔が
「失敗した事はないから大丈夫だよ」
って微笑むから、少しだけわくわくが大きくなった。
同時にーーオレの心の中の醜い部分がじゅくり、と疼く。
失敗した事は、ないから。…か。
…きっとそうなんだろう。太輔は才能と美貌に恵まれ、光に愛されて、綺麗に咲き誇ることを許されたヒマワリなんだろうから。
雨に曝されたとしたって、風に殴られたとしたって、それにびくともしないほどの強い光と愛を蓄えられる、選ばれた人なんだ。
太輔はオレと違って、それが許される人なんだ。
「…羨ましいよ」
そんな声が自分の中から放出されて、はっと口を手で覆った。太輔の顔に目を向ければ、まるい目をした太輔がぱち、とまばたきをした。
その反応で、オレの失態が明らかになる。
(オレは今、声に出して…)
心音が、いやな大きさでドクドクと響きはじめた。太輔のきょとんとした表情に、うしろめたさと少しの恐怖を覚える。
「羨ましい?…俺が?」
太輔が、表情をぴくりとも動かさないまま、再びゆっくりまばたきをする。
「…それが、渉の棘?」
「っ、あの…」
「そっか。俺は、渉の棘のひとつになってたんだね」
太輔の唇が、小さく動いて三日月形に変わった。
でも、そのあとに結ばれた微笑みは、苦笑いに似た悲しいものだった。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時