薔薇と絆創膏・2 ページ15
オレをまっすぐ見つめた太輔は、肉厚の唇をきゅっとつり上げて綺麗に笑った。
昼間、オレに
「棘を持ってる」と言った時と、まったく同じ表情をしてる。
「俺はね、渉がどんな棘を背負ってるのかはまったく分からない。渉と出会ってからは、まだそんなに経ってないしね。まだまだ知らない顔もたくさんあるんだと思うし、話してもらえなくて当然だとも思ってる。でもね」
太輔の両手が、そっとオレの右手を包んだ。親指が、ぴくりと痙攣する。
「渉がどんな棘を背負っていても、俺は、その棘ごと抱き締めたいと思ってる。たとえばそれが、どんなに衝撃的な事でも」
「太輔…」
「渉は時々、親指を震わせるよね。俺に絆創膏を貼ってくれた場所と同じだ」
「っ。気づいて…!」
その答えは、太輔の静かなまなざしだけだった。
でも、それは、紛れもなく肯定だった。
なんで…まさか、太輔は…気づいてた?
絆創膏を貼ってあげたオレが、絆創膏で隠したみっともない真意に…気づいてた…?
「…どこまで。いつから、気づいて…」
「何も知らない。渉が話してくれてないもの」
柔らかく微笑む太輔の瞳には、優しさだけが見える。
「でも、その綺麗な体にたくさんの棘が刺さってるのはすぐに気づいたよ。泣きそうな顔で一所懸命笑いながら俺の傷を隠してくれたのだけは、すぐ分かった」
親指が、ピリッと痺れた。太輔の笑みが深くなる。
「だから次は、渉の傷は俺が隠してあげたい。渉自身でも気づかなくなるくらい綺麗に、毎日俺が贈る薔薇の花みたいに、棘の消えた綺麗な薔薇にしてあげたい」
「…そんな」
「どんな渉でも愛しいよ。渉は、まっ赤に染まったどんな薔薇よりも綺麗な人だから」
甘い囁きが、鼓膜から染み込んでオレの体を駆けめぐる。
太輔の甘い声にやられたオレの体は、親指に感じたのと同じ、ピリピリと疼く痺れをいつまでも燻らせていた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時