鮮やかなドライフラワー・2 ページ41
「死んだ、ヒマワリ…?」
「そう。だから、今が最高で最低。今以上に俺に陽が当たる事はないって思ってる」
「…それって、どういう意味」
「いつからかな。作品じゃなくて、俺自身が注目されるようになったのは。忘れちゃったけど…俺の名前が知れるにつれて、作品が紹介される事はほとんどなくなっちゃったんだよね」
その静かな声が、オレの喉元をきゅうっと締め上げてきた。太輔が少し困ったように眉を下げて、力なく微笑む。
「最初は俺が顔を出す事で少しでもお仕事が貰えるなら、花を生ける機会が増えるならって積極的に顔を出す事にしたんだ。バラエティにも、ニュースにも、コマーシャルにも、本の表紙にも。でも俺が顔を出せば出すほど、俺は自分のセンスや才能で仕事を取る事ができなくなっていった」
「センス…」
「うん。ありがたい事にお仕事はたくさんいただけるし、教室もたくさん生徒さんが通ってくれてる。渉と同じお花屋さんを演じられたのも幸せだった。だけどそれは、俺の才能で取った仕事じゃないんだよね。才能以外の…顔とか顔とか、顔とか。事実、俺の才能や作品の事には、ほとんど誰も触れてくれない」
ふふ。と揺れた彼の吐息がひどく寒くて、ぶるっと震える。
「イケメン華道家って、まるで華道の方がオマケみたいだよね。つまり俺には、外見に負けるような才能しかなかったんだなって。その時点で俺の才能はもう、死んだんだなって思うようになっていった」
「そ、んな。…死んでる、なんて」
「それでも俺は花を生けるのが大好きだし、たとえ顔が目的であっても、そのついでに一回でも多く作品を見てもらえるならやっぱり嬉しいし逃したくない。そう思って生け花以外の事も全力で臨ませてもらってるけど、まだこの道に自信は持てないんだ」
「太輔…」
オレが口を開いて、彼の名を呼んだ時だった。店のドアが開いて、若い女性が一人、入ってきた。
「あ。お客さん…」
「ごめん。長居しすぎちゃったね。邪魔にならないように俺は帰るよ」
「あ、あの」
「今日の夜、開いてる?」
ぎこちなく頷くと、太輔が柔らかく笑った。
「よかった。後で迎えにくるよ。一緒にごはん食べに行こう」
「あ…」
「あとでね。渉さえよかったら、話の続きをしよう」
いつも通り、スマートに去っていった太輔の背中は、雨に濡れたヒマワリのように項垂れているように見えた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時