Last_Lover

KISS_FOR_U（y視点） ページ28

side(y)


　今日の楽屋は騒がしい。

　理由は、メンバーが揃っているから。

　ここしばらくソロや舞祭組での仕事が続いていたけれど、今日は七人揃っての番組収録。

　騒々しくはあるけれど、やっぱり、メンバー全員が揃っているのはいいなって思う。

　みつとニカも楽しそうに話してるし。

　二人が気まずい雰囲気のときに出くわしてしまったから心配してたけど、すっかりいつもの二人に戻ってるみたいで安心した。

「渉、なに見てるの」

　マネージャーとの会話を終えた太輔が、オレのとなりに腰をおろした。


　ふわりと香ってきた太輔の匂いに、どきっとする。


　いままであまり意識したことはなかったけれど、太輔はすごくいい匂いがする。
　香水なのかシャンプーなのかはわからないけれど、オレも好きな系統の香りだからそばで嗅いでいると心地いい。

「太輔さ、いい匂いするよね」

　胸元に顔を寄せて、嗅いでみる。

「うん。やっぱり好きな匂い」

　そう言ったけれど太輔からの返事がなくて、首をかしげる。

　顔をあげると、太輔は顔を真っ赤にしてオレを見下ろしていた。

「え、太輔…？」


　…あれ。

　オレ、失礼なこと言った？


　そういうこと、あんまりふれてほしくなかったかな。

「あの、太輔…」

「っ！」

　太輔がおおげさに肩を揺らす。その行動にオレもびっくりして、太輔との距離をとった。

　太輔が唇を噛む。


「……なに…」

　あいかわらず顔を赤くしたまま、低い声で太輔がそうつぶやいた。

「え、なにって…太輔がだまってるから…」

「っ、なにもないよ…」

　なにもないとは思えないけど…。

　でも、声を聞くかぎり気を悪くしたわけでもなさそうで、胸を撫で下ろす。

「それより。…わた、さっきなにみてたの」

「ん？ああ、七人いると騒がしいなって」

　太輔が楽屋を見回した。

「ああ…そうだね。うるさいね」

「でも嬉しいよね。楽しい」

　みつとニカだけじゃなくケントも、裕太や宮っちも楽しそうに笑っていて、そんな様子を見ているとオレもつられて笑ってしまう。
　これって素敵なことだなって、今日みたいな日はすごく実感する。


　それに、太輔の存在も。

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