Last_Lover

Love_meee（f視点） ページ20

side(f)


　楽屋に入ったら、渉と北山の様子が少し変だった。


　北山はちょっとテンションが低いぐらいで、気にするほどでもなさそうだけど…問題は、渉。

　みんなと話してるときや撮影中はいつも通りにふるまってるけど、人の視線から逃れた瞬間、すごく疲れきったような顔をする。

　はあって、何回も小さなためいきを漏らしてる。


　渉がこんなしおれかたする原因なんて、ひとつしか浮かばない。北山の様子も、ちょっとおかしいし。

　また二人のあいだになにかあったのかと思ったけど、俺が見るかぎり、二人がしゃべってる雰囲気はいつも通りだった。

　でも、渉と北山が同じタイミングでなんて、不自然すぎる。
　渉の気持ちを知ってるから深読みしちゃうのかもしれないけど…。

　途中、ニカが北山に話しかけてからは二人で楽しそうにしゃべってたけど、渉はそこには加わらないで、そっと離れて、やっぱり暗い顔でぼうっと立ってる。


　なに。

　なにがあったの。

　想像できないことだらけで、俺も渉にどう声をかけていいのかわからない。


「渉。…大丈夫？」

　結局、気づかないふりはできなくて、そう話しかけた。

「んー。なにが？」

「元気がないみたいだから…体調悪い？」

「そう？普通だけど」


　普通じゃないよ。ぜんぜん違うじゃん。

　じゃあ、なんでためいきなんてつくの。

　なんで、暗い顔して下を向くの。


　問い詰めるようにじっと渉を見てたら、渉が困った顔して肩をすくめた。

「太輔は、するどいよね」

　のびてきた手が、俺の頭を撫でる。

「ごめん、本当はちょっと考えごとしてた。こんなんじゃ、みんなにも迷惑かけるね。ちゃんとしないと」


　考えごと？


　違うでしょ、落ち込んでるんでしょ。


　悲しいことがあったんでしょ？


　そのあと、渉は必死に元気なふりをして笑っていたけど…無理をして派手に笑う渉の姿は、見ているこっちが悲しくなった。

「横尾さん今日はテンション高いね！」

　なんて健永が嬉しそうに笑ってたけど、俺は笑えない。

　いまの渉はあぶなっかしい。

　仕事中はスイッチが入ってるからしっかりしてるけど、気を抜いた瞬間は心ここにあらずって感じでぼーっとしてる。


　撮影が終わる頃には北山の様子はもうすっかり普段通りだったから、余計に渉のことが心配になる。

　このまま別れてしまうのは嫌で、渉、って声をかけようとしたところで、マネージャーに呼び止められてしまった。

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