Last_Lover

Luv_Sick（f視点） ページ1

side(f)

　
　好きな人がいる。


　もう何年もずっと片思い。


　だけどこの気持ちを口にする瞬間は、たぶん一生やってこない。

　だって相手は同じグループのメンバーで、親友で…同性。しかも彼には好きな人がいる。告白しても、応えてもらえるわけがない。

　だから俺はただの親友のふりをして、じゃれてるふりをして今日もよこしまな思いを抱えて彼の肌に触れる。

　緊張で震えそうになる声を必死に隠して、名前を呼ぶ。

　ドキドキ跳ねてる心臓に気づかれないように、必死になんでもないふりをして笑う。

　いいんだ、友達で。

　だってlikeの意味での一番は俺でしょ？知ってるんだから。自信あるもん。
　彼のlikeを一番たくさんもらってるのは俺。
　親友。今はそのポジションでいい。

　両思いになりたくないわけじゃない。そりゃあもちろん、気持ちが通じ合えたらって、恋人になれたらって、何度も妄想した。

　だけど、やっぱり伝えられない。

　彼もずっと長い間、片想いに悩んでるって、知ってるから。

　片想いの切なさを知ってる彼に俺の気持ちを伝えてしまったら、きっと彼は辛そうな顔をするから。
　俺が原因でそんな顔をさせたくない。

　だからね、わた

　俺の気持ちになんて一生気づかないで。

　そのかわりに、誰よりも隣にいさせて。触れさせて。

　他の人に恋しててもいいから、loveじゃなくていいから俺に触れて。俺を呼んで。抱き締めて。笑って。

　好きって、言って…？



「わた！」

　雑誌の撮影が終わって、いそいそと渉のそばに移動する。渉は近づいてきた俺をちらりと見ると、いつもの眩しい笑顔で名前を呼んでくれた。

「太輔。おつかれ、どうした？」

「おつかれ。んっとね、わた、このあと仕事入ってる？」

「オレ？ううん、ないよ」

「ほんと！俺も！じゃあさ、久しぶりにご飯行かない？」

　ドキドキしながら見上げると、一瞬きょとんと目を見開いた渉が

「いいね！」

　って頷いてくれた。

　ああうれしい。
　絡ませた腕にも、自然と力が入ってしまう。ご飯を一緒に食べる、ただそれだけのことなんだけど、それだけのことがすごく嬉しい。最近は個々での仕事も増えてきてて、以前よりも二人で過ごす自由な時間が減ってしまっていたから。

「わたと二人きりって久々だから楽しみ」

　そう言って、もうほんの少しだけ、渉に体を寄せたときだった。

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