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20. ページ22

公爵家というのは厄介だ。

貴族の爵位の序列は公・侯・伯・子・男と呼ばれ、元は王族である家が多い公爵家。

同じ公爵でもない限り、公爵家を取り潰すというのは難しいのだ。

唯一公爵家よりも上に立つのは王家だが、今はその肝心な王家に権力がない。

第一、せっかく一度は収まった内乱が再び起こることになる。

はあ、とため息をついたころん。

「るぅとくんがどうしようと、るぅとくんの勝手なんだけどさ」

可能性は低く難しいのだから諦めろ、とるぅとに言うのも違う。

思い浮かぶのはななもりの顔だ。

ただるぅとがフレッサ王国へ戻るだけなら、確実に殺されてしまう。

どうすれば、とぐるぐる考えた挙句に、ころんは「あぁもう!」と叫んだ。

ころんが突然叫んだものだから、るぅとはビクッとしたが、通行人も驚く。

「あ、すんません……ごめんなさい……」

ころんはハッとして、謝りながらるぅとの手を引いて歩き出した。

「ころんさん、どうしたんですか?」

不思議そうなるぅとの声に、ころんは頭を振る。

「なんでもない。あと、ころんさんって呼ぶのやめて」
「え?」

それきり黙ってしまったころんを見て、るぅとは首を傾げた。

「ころんさん」

反応はない。

「ころんくん。ころん……ころちゃん」

莉犬が確かそう呼んでいたような、と思い出して呼んでみると、手をぎゅっと握られた。

この呼び方だったらしい。

「ころちゃん、って呼んだらいいんですか?」
「うん」

るぅとはどうして突然? とまた首を傾げるが、ころんは何も言わない。

勝手知ったる様子で、ころんはどんどん道を曲がって歩いていく。

街の雰囲気はだんだんと変わり、賑やかな場所から寂しさを感じる場所になっていた。

「フードかぶって」

突然立ち止まったころんが、るぅとの頭にフードをかぶせる。

ころん自身もフードをかぶると、しゃがみ込んでるぅとの顔を見た。

「るぅとくんはこういうところに来たことあるかどうかわかんないけど、この先は貧民街になってる。あまり素性を知られないようにして」
「え、あ……はい」

頷いたるぅと。

うん、ところんも頷いて、また立ち上がって歩き始める。

角を一つ曲がると、そこは先ほどまでいた街とは違う世界が広がっていた。

「わ」

思わずるぅとは目を丸くする。

修理されていない家、路上に寝転ぶ人たち、どこからか聞こえる喧嘩する声。

るぅとには見慣れないものばかりだ。

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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時

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