検索窓
今日:16 hit、昨日:6 hit、合計:22,287 hit

10. ページ11

ころんは箱の中身を確認して、瓶を一つ持ち上げた。

「さとみくん、これ何色?」

るぅとの頭を撫でていたさとみは振り返って、目を細める。

「あぁ、それは紫だな」
「じゃあこっちは?」
「それは黒」

へえ、と瓶を二つ並べて考え込んだころん。

「それ、なんですか」

さとみにも慣れてきたるぅとは、ころんに近寄る。

「染料。髪を染めるためのものだよ」

この髪色じゃ僕は街に行けないからさ、ところんは呟く。

言葉の意味を考えたるぅとは、ハッとした。

フレッサ王国では、金や黄色が王族の色だ。

プラタノ皇国では、青や水色が皇族の色になる。

「こいつ、フレッサ王国では何でもない髪と瞳の色なんだろうけどさ、プラタノ皇国だと完全に皇族の色なのよ。このまま街に出ると大変なことになるわけ」

さとみは肩をすくめる。

「だから街で暮らせなくてこんな森の中で暮らしてるんだよ。ヴァルトなんて好き好んで住むような場所じゃねえし」

なるほど、とるぅとはころんの顔を見る。

気にしてはいなかったが、言われてみればそうだ。

「街で暮らせる莉犬くんが羨ましいよ。いくら染めて髪色をごまかすって言ったって、この染料も長くて三日しか持たないじゃん」
「仕方ないだろ、普通の人は髪は染めねえんだよ。それに莉犬だって街で暮らすために苦労してる」

知ってるし、と拗ねたころん。

「髪色さえ違ってれば皇族の色にならないのはまだ助かるんだけど」
「まあな。俺も瞳の色が青だからか、一瞬驚かれるよ」
「さとみくんは髪色が違うからいいじゃん。ほら、これはるぅとくんの分」

はい、と渡された瓶を見て、るぅとは目を丸くした。

「るぅとくんも、その色はフレッサ王国の王族だってすぐにわかるから。髪色くらい変えないと街には行けないよ」
「え、あ」

言われてみれば、るぅともそうなのだ。

ここまではっきりしていたら、いくらプラタノ皇国内でも注目はされてしまう。

「それ、黒色だから。るぅとくんは黄色だし、黒色もすぐに入ると思うよ」

僕は紫が入りやすいかなあ、と考えているころんを見て、さとみは小さく笑った。

「ころんって、精霊士なのに外見を変えるのに精霊の力は使わないよな。魔法も使えるはずだろ」

ん? とさとみを見上げたころん。

「あぁ……無駄なことに力は使いたくないからね。僕も面倒くさがりなんだよ」

ころんは興味がなさそうに言った。

11.→←9.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (64 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
52人がお気に入り
設定タグ:stxxx
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。