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ころんは箱の中身を確認して、瓶を一つ持ち上げた。
「さとみくん、これ何色?」
るぅとの頭を撫でていたさとみは振り返って、目を細める。
「あぁ、それは紫だな」
「じゃあこっちは?」
「それは黒」
へえ、と瓶を二つ並べて考え込んだころん。
「それ、なんですか」
さとみにも慣れてきたるぅとは、ころんに近寄る。
「染料。髪を染めるためのものだよ」
この髪色じゃ僕は街に行けないからさ、ところんは呟く。
言葉の意味を考えたるぅとは、ハッとした。
フレッサ王国では、金や黄色が王族の色だ。
プラタノ皇国では、青や水色が皇族の色になる。
「こいつ、フレッサ王国では何でもない髪と瞳の色なんだろうけどさ、プラタノ皇国だと完全に皇族の色なのよ。このまま街に出ると大変なことになるわけ」
さとみは肩をすくめる。
「だから街で暮らせなくてこんな森の中で暮らしてるんだよ。ヴァルトなんて好き好んで住むような場所じゃねえし」
なるほど、とるぅとはころんの顔を見る。
気にしてはいなかったが、言われてみればそうだ。
「街で暮らせる莉犬くんが羨ましいよ。いくら染めて髪色をごまかすって言ったって、この染料も長くて三日しか持たないじゃん」
「仕方ないだろ、普通の人は髪は染めねえんだよ。それに莉犬だって街で暮らすために苦労してる」
知ってるし、と拗ねたころん。
「髪色さえ違ってれば皇族の色にならないのはまだ助かるんだけど」
「まあな。俺も瞳の色が青だからか、一瞬驚かれるよ」
「さとみくんは髪色が違うからいいじゃん。ほら、これはるぅとくんの分」
はい、と渡された瓶を見て、るぅとは目を丸くした。
「るぅとくんも、その色はフレッサ王国の王族だってすぐにわかるから。髪色くらい変えないと街には行けないよ」
「え、あ」
言われてみれば、るぅともそうなのだ。
ここまではっきりしていたら、いくらプラタノ皇国内でも注目はされてしまう。
「それ、黒色だから。るぅとくんは黄色だし、黒色もすぐに入ると思うよ」
僕は紫が入りやすいかなあ、と考えているころんを見て、さとみは小さく笑った。
「ころんって、精霊士なのに外見を変えるのに精霊の力は使わないよな。魔法も使えるはずだろ」
ん? とさとみを見上げたころん。
「あぁ……無駄なことに力は使いたくないからね。僕も面倒くさがりなんだよ」
ころんは興味がなさそうに言った。
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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時