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怜生Side
夜風吹く警視庁の屋上に来た。
俺には、帰る場所がない。
だから、ここにずっと居る。
新入り、真咲。
あいつは、幸せな環境で育ってきたんだろうな。
なんとなく、分る。
??「怜生。」
俺の場所である屋上に、光黄が来た。
ここには来るなっていつも言ってるのに。
まるで、何でもお見通しとでも言わんばかりの顔で近づいてくる。
光黄「はい。ワイン。」
そう言って、こんな場所で飲むのがピッタリなあっさりした白ワインの入ったグラスをわたしてくる。
ワインを受け取り、彼の手にはもう一つのワイングラスが残る。
だから、光黄のことは憎めない。
俺の一番欲しているものを常に持ってきてくれるから。
クルクル))
グラスを回す音がやけに大きく聞こえる。
何も話さないけど、隣に居られても嫌じゃない。
俺がコンピューターだったら一発で答えだって出るかもしれないのに。
生憎人間だから、答えが出ない。
いや、俺たちの人生なんかに、正解の選択肢なんて今まであったのか?とも思ってしまう。
俺や、光黄だけじゃない。
宙だって答えは出ていない。
みんな共通して思うこと。
健水に”愛”だという自覚を取り戻してほしい。
あいつの中のあいつは結局…
自分は”愛”では無いという結論を下したようだった。
元のあいつに戻ってほしい。
そんなみんなの共通の思いがあるのに。
なのに、共通しているようでしていない。
俺たちの心は、いつからかすれ違って行った。
全員の心をハッキングできたら少しは答えに近づけるかもしれないのに…
そんなありえないことを考えてみたりする。
光黄「どう?新入りくん。」
怜生「使えねぇよ。鑑識も解剖もハッキングもできない。挙句の果てに、死体にえずくんだぞ。足手まといだろ、どう考えても。」
光黄「あっそ。そんなこと言って一番歓迎してる癖に。仲良くしたいなら、もっと愛想よくしなきゃ。」
まただ。
そうやって、俺の心の奥底にほんの少しだけ芽生えた思いを全部見透かす。
新入りなんて、結成してから初めてで、浦正くんから聞いたときは気に食わなかった。
でもそのあとに、そのうちの一人が宙だって知って…
それで、どうせだからって、2人ともうち受け入れたんだ。
あの雰囲気。
目も顔も声も。
全てが、俺にないもので羨ましかったけど、なぜか自然に会話ができた。
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